第3話:魔王様の寝室と、呪いの正体
今回は魔王様の寝室に突撃します。怨念の正体とは……?
「……これは、
想像以上に
重症ですね」
魔王ゼノス様に案内された寝室。
そこは、
一歩足を踏み入れただけで
耳鳴りがするほどの
「闇」が溜まっていました。
豪華な天蓋付きベッドの周りには、
実体化した
『悪夢』が、
黒いモヤとなって
蠢いています。
「どうだ。
歴代の魔王が
背負ってきた
数千人の怨念だ。
近づくだけで
精神が削られるだろう」
ゼノス様は、
自嘲気味に
笑います。
――ですが。
私の感想は、
少し違いました。
「これ、
ただの
『寝具のメンテナンス不足』です」
「……は?」
「枕元に
こんなに怨念を
溜めるから、
悪夢が
湧くんです。
ゼノス様、
ちょっと窓の外に
出ていてください。
粉塵が舞うので」
私は腕まくりをすると、
最強の掃除道具を
取り出しました。
それは――
聖女時代に支給されたものの、
「強すぎるから」と
封印されていた、
伝説の神器。
「いでよ、
『万物を払う
神のハタキ
(エクソシスト・バスター)』!」
バサァッ!
私がハタキを振るうたび、
魔王が
何百年も
恐れてきた
怨念のモヤが、
「ひぎぃっ!?」
という断末魔を上げて、
霧散していきます。
それは、
除霊というより――
もはや
物理的な
「叩き出し」でした。
「こら、そこ!
タンスの裏に
隠れても
無駄ですよ!
はい、
成仏!」
仕上げに、
シーツを
バサバサと広げます。
私の指先から
溢れる
聖なる魔力が、
繊維の一本一本にまで
浸透し、
呪いのシミを
真っ白な輝きへと
変えていきました。
数分後。
そこには――
窓から差し込む
陽光に照らされた、
驚くほど
清潔で、
フカフカな
空間。
「……信じられん。
肌を刺すような
殺気が、
完全に
消えただと?」
戻ってきたゼノス様が、
恐る恐る
ベッドに
腰を下ろします。
その瞬間。
彼の体が、
ふわりと
沈み込みました。
「……っ。
なんだ、
この柔らかさは。
まるで
お菓子の雲の上に
いるようだ……」
「それは、
『柔軟魔法』を
仕上げに
かけたからです。
さあ、魔王様。
まずは
少しお休みになってください。
お掃除の基本は、
心身の休息からですよ」
私が毛布を
肩まで
掛けてあげると、
冷徹だった
魔王様の顔が、
みるみるうちに
トロンと
蕩けていきました。
最強の魔王が、
まるで
幼子のように、
スヤスヤと
寝息を立て始めます。
「……ふふ。
おやすみなさい。
……あ、
耳元に
まだ少し
呪霊が。
えい」
指先で、
ピン、と
弾くと、
最後の呪縛が
消え去りました。
――その時。
私の頭の中に、
不思議な声が
響きます。
《経験値が
一定に達しました。
スキル
『因果律清掃』が
解放されました》
……因果律?
よくわかりませんが、
より綺麗に
お掃除できるように
なったみたいです!
◇◇◇
その頃。
聖王国の
エリオット王子は、
かつてない
危機に
瀕していました。
「リリアを
連れ戻せ!?
なぜだ、
父上!」
玉座の間で、
国王が
顔を青くして
叫びます。
王宮の廊下には、
リリアが掃除していた頃には
見えなかった
「目」や「口」が、
壁に浮かび上がり、
不気味な笑みを
浮かべていました。
「馬鹿者!
リリアがいなくなってから、
城内の
浄化結界が
完全に消失したのだ!
今や王宮は、
大陸で最も危険な
ダンジョンと
化している!」
「なっ……!
そんなはずは!
あいつは
ただの掃除女ですよ!?」
「その掃除が、
この国を
数千年間
守り続けてきた
『国教の神髄』だったのだ!
今すぐ彼女を
連れ戻し、
土下座してでも
復職させろ!」
「くっ……!
そ、そんな……!
どこへ行ったかなど……!」
王子は、
知りませんでした。
彼らが
「無能」と笑って
追い出した聖女が――
今や、
人類の天敵である魔王を、
その
「フカフカな寝心地」で
完全に懐柔して
しまっていることを。
伝説の神器をハタキとして使う聖女。ゼノス様もようやく安眠できそうですね。
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