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16一緒にタウンハウスに


 エルディはその日は仕事を早めに切り上げるとレオルカ様と一緒にクワイエス侯爵家のタウンハウスに戻った。

 レオルカ様が馬車の中で叔父様には帰ってから話をすると言った。それにケネト王子の婚約者のキャサリンが怪しい事も教えてくれた。


 屋敷では叔母様が出迎えてくれた。

 「叔母様ただいま帰りました」

 まずエルディが挨拶をした。続いてレオルカ。

 「夫人、前触れもなく突然お邪魔することをお許しください」

 「まあ、何を言ってるの。レオルカ様はもう家族じゃない。遠慮はいらないわ。さあ、入ってちょうだい」

 「はい、失礼します。あの団長は?」

 そこは確認済みだったはずなのにと思ってしまう。

 「ええ、今日は夕食までには帰るはずよ」

 「そうですか。それからアンリエッタ様は?」

 アンリエッタ様は今日は早く帰ると聞いていた。

 「もう帰ってるわ。エルディ。レオルカ様をリビングルームにご案内しなさい。今お茶でもお持ちしますから、夕食にはみんな揃うはずですよ」

 叔母様はみんなに話があるのだろうと分かったようでそう言うと使用人にお茶の用意を頼んでその場を離れた。


 エルディはリビングルームにレオルカ様を案内しながら今日の彼の様子にでれっとなった。

 (だって…今日はレオルカ様がやたらに甘い。

 昼食はもちろん一緒に取ったし時間さえあれば様子を見に来てくれた。

 脅迫状はすごく恐かったが彼が心配ない。俺が絶対に守るなんて言ってくれてそれがものすごくうれしくて。

 真っ直ぐに向けてくれる視線には揺るぎない愛情が感じれてそれがまた幸せだって思えて。

 ああ‥私はレオルカ様が好きなんだなって改めて自分の気持ちに気づかされて。

 また気持ちがそわそわして…もう、やだ。私、ほんとにどうかしてる)

 とうとうリビングルームの前で口もとに手を当てて立ちどまった。


 「エルディどうかした?気分でも悪い?」

 レオルカ様の大きな手がそっと肩をつかむ。扉のノブを開けると腰に腕を回されて部屋に中にいざなわれる。

 「ううん、あなたがいるから何も心配ないって思ってたらうれしくて…」

 ふたりの視線が絡み合う。

 レオルカ様はふわりと笑ってみたことがないような笑顔を向けて来る。

 「ああ、心配ない。しばらくは俺が送り迎えもする。だから安心してエルディ」

 そっとソファーに座らされてすぐ横にレオルカ様が座る。

 その距離は一ミリもないほどぴったりと身体を寄せ合って肌の温もりさえも伝わってくる。

 「ええ、こうしてるとすごく安心出来る」止めれない心の声。

 甘えるように彼の胸に顔をうずめる。

 う~ん。男らしい香りがして脳芯が痺れそう。

 そっと背中をさすられて、もう片方の指先は私の手の甲を行ったり来たりして時々すっぽり包んでみたりして。

 甘やかな刺激にかぁっと頬が火照る。

 「れおるかさまぁぁ」小さな声でつぶやく。

 「えるでぃぃ。可愛い」被さるようにレオルカ様の顔が耳元に近づいて耳孔のすぐそばで囁かれ背中にあった手が栗毛色の髪を撫ぜつけた。

 「はっぁぁぁ」悶絶した。


 

 しばらくするとシルビア様がクワイエス家を訪れたらしくリビングルームの外から声がした。

 「エルディここにいるって聞いたけど…」

 シルビア様がリビングルームで声をかけた。

 私達はすっと離れるとすぐにシルビア様が入って来た。

 「はい、まあ、シルビア様お久しぶりです」

 声が上ずる。仕方がないだろう。

 「ええ、ほんとに久しぶりだわ。あらトリスティス子爵令息もご一緒だったの。トリスティス令息ごきげんよう」

 「ええ、ブロシウス公爵令嬢、お久しぶりです。あの、一応俺とエルディは婚約してますので…」

 と言うのもシルビア様が入って来た時ふたりはすぐに離れたが身体は擦り合わさったままだったからだ。

 エルディは脅迫状の事ですごく不安になっていたし、レオルカ様は安心させようと慰めていたくれていたところだったのよと言いたくなった。


 「ちょうど良かったわ。エルディ結婚式が決まったんですって?」

 「はい、偶然ルーズベリー教会に空きが出て申し込んだら決まったんです」

 「そうらしいわね。アンリエッタから聞いたわ。あの子悔しがってたわよ。どう?私に譲る気はない?私も申し込んでいるけど後1年近くも先なのよ。もういい加減早くしろって父はうるさいしザラファン様はずっと領地だし…」

 「シルビア様は領地にはいかないんですか?」

 「わたし?はぁぁぁ…私は王都が好きなの。だってあちらは冬は厳しいし社交もないでしょう。私に取ったら退屈なところだもの」

 シルビア様は確かに社交好きらしいと聞く。お茶会や仮面舞踏会にもよく顔を出していたらしいとアンリエッタお姉様から聞いた。

 なのにシルビア様のお父様が、宰相をされているのだが、どうしてもクワイエスと縁を持ちたいとおっしゃってふたりの婚約が整ったと聞いた。


 「シルビア様だったら結婚式は1年先の方がいいのではありませんか?」

 「まあ、そうよ。これも社交辞令じゃない。変ってほしいなんて言わないから安心して。とにかくおめでとう。結婚式には絶対に行くから‥ああ、楽しみだわ~」

 シルビア様は言いたいことを言うと部屋から出て行った。

 レオルカ様が大きくため息を吐いたのは言うまでもなかった。








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