13脅迫状(レオルカ)
「エルディ?いいから心配するな」
「でも…」
そこに人が入って来た。騎士団の事務員のカーラだ。
「小隊長。いくら婚約者だからって朝ですよ」
「すまん。じゃ、エルディ後で昼食の時話をしよう。いいな?」
「ええ、後で」
俺はやっとエルディを離して部屋を出ようとした。
「エルディ、今これ預かったんだけど」
カーラがエルディに封筒を渡した。
エルディは後ろを見るが名前はない。
「カーラさん。これ誰からです?」
「えっ?廊下ですれ違いざまに渡されて…あれは多分王族か貴族の事務官だと思うけど…」
騎士団は王宮と隣り合っていて、貴族や王族も出入りするし書簡などのやり取りもあるので王宮の事務官なども出入りする。
「そうですか…」
エルディはその封筒を開けると中から便箋を取り出した。
「……なにこれ?」
エルデイの顔が見る見るうちに強張って行く。
するりと便箋が手から落ちる。
俺はうん?とその手紙が誰からか気になって足を止めていた。
「誰から?」
エルディの様子が変で俺の気分は一気にフリーズする。
落ちた手紙を拾い上げてそれを見る。
~エルディ。
いいか。ルーズベリー教会で結婚式を挙げるのをやめろ。
もしこのまま結婚式を挙げるつもりならお前の身に何が起きるか責任は持てない。
わかったら、結婚式を取りやめるんだ。
すぐに結婚式を取りやめる手続きをすることだ。いいな。
いいな?お前を見張っている。ごまかしは効かないからな。~
「誰だ!こんなふざけた事をする奴は…エルディ心配するな。俺が絶対犯人を突き止める」
エルディはその場に固まったままで。
俺はそっとエルディの腰を掴んで事務室のソファーに座らせる。
「カーラ、これを渡した奴がほんとに誰かわからないのか?」
「すみません。ほんの一瞬でいつもの書簡かと思ったので」
「すまん。まあ、それを狙って、この忙しい朝に持って来たんだろうな。そうだ。カーラ。エルディにお茶を頼んでもいいか?」
「ええ、それより、その手紙は何なんです?」
「いや、俺の悪口が書いてあっただけだ。だからエルディが気を悪くしたんだ」
「まあ、嫌ですね。でも、ふたりとも仲がいいんですね。さあ、お茶煎れて来ますね」
「エルディしばらく休むか?こんなんじゃ仕事にならないだろう?送って行こうか?」
「でも、この手紙がお姉様の仕業だったら…タウンハウスだって安心できるかどうか…」
「ああ、でもきっとアンリエッタ様じゃないと思う。君の家族がこんな事するなんて信じれない。そうだろう?」
「も、もちろんです。私だってお姉様を信じたいけど…でも‥」
「俺に心当たりがあるんだ。それに騎士団長の耳にも入れておく」
「心当たり?それ叔父様に話すの?」
「ああ、もう悠長なことは言ってられない。何しろ脅迫までするとなるとたちが悪いからな。じゃあ、俺の仕事が終わるまでここにいればいい。その方が俺も安心だし。帰りは送って行く。そしてきちんとみんなにも話をしよう」
「ええ、そうね。お姉様がこんな事してないってはっきりした方が安心だもの。レオルカ様あなたの言う通りにします」
「ああ、エルディはいい子だ」
俺はエルディの髪をクシャっと撫ぜる。
「また、子供扱いして…レオルカ様ひどいです」
「じゃあ、これで」
そう言うと俺はエルディの唇に軽く触れて立ち上がった。
「れおるかさま!ここは職場ですよ~」
耳まで真っ赤にしたエルディは口をとがらせる。
俺はそんなエルディが可愛すぎて膝がかくんと折れそうになった。
「お茶が入りましたよ。あら、小隊長。ここは職場です。もう、朝から見せつけないで下さい!」
「カーラ誤解だ!」
「早く出て行って下さい!」
「わかったわかった。じゃあ、エルディ後でな」
「はい。レオルカ様」
俺はやっとエルディを放すと部屋から出て行った。
ポケットにはエルディに届いた脅迫状が入っていた。
こんなものをエルディに持たせておくわけには行かない。いくら何でもひどすぎるからな。
まずはケネト王子からだ。
俺は自分の小隊の奴らがいる練習場に急いだ。