11どうなってるの?
タウンハウスに帰っては来たがアンリエッタお姉様と顔を合わせたくなかった。
顔を合わせればブーケのことを聞いてしまう。紙を見せてお姉様にひどい事を言ってしまうかもしれない。
もしそうなったら、今までの信頼関係がずたずたになってしまうのは目に見えている。
エルディはどうしたらいいかと悩んだが、答えは出なかった。
なるべくアンリエッタお姉様と顔を合わせないようにして数日が過ぎた。
もちろんレオルカ様にもブーケの事を話さなかった。
ドレスの事もある。話せばレオルカ様はエリク様に聞くかもしれない。そんな事をすればアンリエッタお姉様の耳にも入るだろう。
そして結婚式まで1ケ月を切った。
仕事から帰ると叔母様が話があると言った。
「叔母様、なんでしょう?」
「エルディ、どういう事?」
「あなたの結婚式の招待状を送ったのよ」
「ありがとうございます」
「そうじゃなくて、送った方から問い合わせがあって、結婚式を取りやめるのかって」
「えっ?まさか」
「でも、エルディあなたの名前で招待状を送ったけど事情があって結婚式を取りやめることになったと手紙が届いたそうよ。どういう事?」
「そんな。私そんな事してません。レオルカ様にも聞いてください。結婚式をやめるなんてふたりともそんな事言ってませんから!」
「まあ、どういうことなの?誰がそんな事を?これは問題よ。クワイエス侯爵家の信用にもかかわるわ。主人にも話して誰がそんな事をしたのかつきとめなきゃね。じゃあ急いで予定通り結婚式を挙げるって手紙を送らなきゃ。エルディも手伝って」
「はい、もちろんです。すみません。実は叔母様今まで黙ってたんですけどドレスも真珠を引きちぎられてデザインを変えたので何とかなったんですけど…」
「なんですってドレスが?まあ、どうして早く言わなかったの」
「だって…アンリエッタお姉様がルーズベリー教会で式を挙げたいって言ってたからてっきりお姉様かもって…」
「エルディ?アンリエッタがそんな事をするとでも?」
「だから言えなかったんです。だって心当たりはお姉様しか…」
「悪いけどアンリエッタはそんな事をするような子じゃないわ。いくらあの教会で式が挙げたいからってあなたを困らせるようなことするはずがないじゃない!」
「ええ、でも、誰からドレスにあんな事をしたのは事実です。それにこの前はブーケに黒い花を入れてほしいと誰かが花屋に託を持って行って…」
「ブーケに黒い花ですって?縁起でもない。黒い花なんて。とにかくアンリエッタは違うわ」
「叔母様、私だってお姉様を信じたいです。でも、こんなことが続くと…ごめんなさい」
エルディはいたたまれなくなって叔母といる部屋から飛び出した。
急いで自分の部屋に駆け込むがもうどうしていいかわからなくなった。
夕食は自分の部屋で取ると言って侍女に運んでもらった。
叔母様は何も言わなかった。きっと怒っているのだろう。
アンリエッタお姉様に話したのだろうか?でも、お姉様は何も言ってはこなかったのではっきりとはわからない。
翌日は早めに屋敷を出て仕事に行った。
泣きはらした瞼が腫れぼったくなってみんなと顔を合わせるのが嫌だったが、勝手に仕事を休むことも出来ない。
エルディは早めに騎士団に着いたので休憩室でこっそり布を濡らして瞼を冷やしながら考える。
(レオルカ様に話をした方がいいだろう。
だって結婚式を取りやめるなんて手紙を送った人がいるんだもの。
もう私一人ではどうすることも出来ない。
これがもしお姉様の仕業だったら?
きっともう二度とお姉様を許せない)