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記憶の宝石  作者: hougen
1/11

生活音が響き、足音が残った場所

2024年 1月 1日 午前11時より、連載開始。


→次回   1月 2日 午前11時に更新。




「しまわれたこと」

         ※しまう…仕舞う、終う、了う





あれは、1月1日だったか

あれは、1月2日だったか…多分、それくらいの事だったと記憶する。



鮮明に浮かぶ。

輪郭が残った記憶。

先に言っておくけど、悪い記憶ではない。

そんな話、今は僕自身が聞きたくないから。

そんな話、今は耳にしたくもないから。




新年が明け、その年は珍しくか、一応の普段通りなのか

昨年の出来事を引きずらずに迎えられた。

いや、毎年の事だが、お金の事は考えてしまう。

貯金については、いつも気がかりに思うよ。


我が家の習慣として、

「元旦にはお金は使ってはいけない。その年、お金が出て行ってしまうから」

「出て行く物と、入ってくる物とは、別な物だから」

毎年、母親に云われ続けて、それを守る年と、守らない年と、両方。

結果的には…振り返って考えてみるも、あまり意識せずに年を終えてしまう

よく分からない迷信だ。




その日は、外へ出たかった。


正月の空気感や、身近な雰囲気を体感したかった。

特にお金を使う予定はなかったけど、車のガソリンメーターは緊急を訴えていた。

記憶によれば、あまり道路を走る車はなかったと思う。

そんな世間の正月の過ごし方に、ほっとしていたとも思う。

「社会が休む日」そんな時も必要に感じる。


先発ピッチャーが任された試合の第一球を投げるように

その年初めてに当たる自分の行動には、慎重な態度で挑む。

車内には、特別何もなかった。

その年の「げんかつぎ」として、自分好みの音楽は車内で流していたと思う。

ふらり と、

人通りの少ない、いつもは混み合う道路

元旦ならではの光量を放つ太陽の下

路面は滑っていたと思う

路面の凍りついた雪にハンドルを取られないよう、

しっかりと、握りしめていた記憶がある。


いつものガソリンスタンド。

やはり、車は止まっていない。

何時頃だったか…午前中だったと思う。

いつものレギュラー1000円分。

満タンにする時は、別なスタンドを利用している。

燃料入れたあと、ガソリンスタンドの裏道からいつも出て行く。

太陽の下、日差しが柔らかく

穏やかで、正月の空気感を肌身に伝える。

裏道から抜けて、右折すると

左に公園。

右側に古いアパート。

日差しの加減が、いつもと違うことに気づくーー

空は、青く

黄色の陽の向き

普段とはちがう角度から

やわらかく、穏やかな、光の質感

3階建てのアパート

1階の窓から、陽が延び

何かを運ぶように

どこかへの道のように

誰かが大往生した記憶のように、

でも、どこかで

いつか視たことがある色合いに

懐かしさと

優しさを

黄色く帯びてーー



車を停めてみた

公園の側に

その黄色い光を覗いてみたかった

バックミラーに影が映り

後ろから車が来た

正月で車通りの少ないことに安心していた僕は

慌ててしまい、停めた車を急発進させた

バックミラーには、黒塗りの大きいステーションワゴン

サイドミラーには、黄色い光が延び、どこかへ向かっていた


そのまま離れてしまい

車内には、カメラがないことに気づく

外出するとき、よく持ち歩いている

その日は、考えていなかった

立ち戻る考えを止め

ただ、脳裏に

光景として残そうとした



それからの数日、同じ場所、同じ時間

立ち寄ってみるも再現されることはなく、

どうしてか?を考えた




撮るべきだった何かに思えたーー





この小説は、他サイト(星空文庫、カクヨム)との重複投稿になりますが、

内容は加筆・修正を一部行いつつ、改訂版としての連載投稿です。

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