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音の鳴るほうへ

作者: 夏川冬道

 遠い昔になくしたはずのものが最近になって偶然出てくるというのはよくある話だろう。しかも見つかった場所が探した場所とは見当違いの場所だったということになれば笑い話のレベルだろう。和泉白花の身に起きた出来事はまさしく今となっては笑い話であろう。


 ある休日の出来事である。白花は山の上の病院にいた。白花の母方のおばさんが交通事故に遭い入院してしまったので、両親とともにお見舞いに来ていたのだ。正直な話、病院というものはあまり長居したいと思うものではないし白花は暇で暇でしょうがなかった。白花は病室の片隅でスマホを弄って暇をつぶしていた。そんな時に突然、白花の耳に何かの声を感じた。白花はその声をナースの声だと思ったが白花の病室の周辺にはナースはいなかった。

――じゃあ誰の声だろう?

 白花はそう思った。だがその声は白花が困惑する様子を楽しんでるかのようにクスクスと笑い声がするではないか。白花は病室の周囲をぐるぐると見渡した。すると病室の扉が少しだけ開いていて、白花と同じ、小学生らしい女の子の姿がわずかに見えた。すると白花は挑発するかのように姿を消した。白花は思わず追いかけていた。

 その謎の女の子は白花を追いかけてくるのを待ってたかのように立ち止り、白花が近づいてくると走り出すことを繰り返していた。白花と女の子は病院内部を追いかけっこを繰り返していた。そして白花が気づいたときには病院の屋上にまで来ていた。屋上には簡素なベンチが設置されていて、入院患者の束の間休憩場所として使われているさまが見て取れた。

 白花はキョロキョロと屋上を見渡して女の子を探した。すると突然白花の視界が暗くなった。誰かに目をふさがれたのだ。

「うわっ! 誰なの!?」

 白花は思わず驚きの声を出した。

 しばらくすると白花の視界に光が戻ってきたので白花は振り向くとそこには小学生の女の子がいた。

「どう、びっくりした?」

「びっくりした、じゃないよ! どうしてこんな悪戯をしたの!?」

 すると小学生の女の子は舌を出して笑った。

「ここでならゆっくり喋れるからつり出したんだ」

 その言葉を聞いた白花は憮然とした。

「私、柿崎真奈未。この病院にずっと入院しているんだ」

 小学生の女の子、真奈未は悪びれもせず自己紹介をした。

「真奈未ちゃんは入院患者なんだ……そうには見えなかったけど」

「まぁね……入院生活は暇でテレビを見るのに飽きちゃって退屈していたところにキミの姿を見かけちゃって……つい、ね?」

「そっか暇なんだ……だから真奈未ちゃんはわたしと遊びたいと?」

すると真奈未は笑った。

「そうだよ、この病院に久しぶりに私と同年代の女の子を見たんだ」

 白花は真奈未の心情を考えると大変そうだなあと思った。

「真奈未ちゃん……こんな私でもよかったら一緒に遊ぼう」

「じゃあ黒ひげ危機一髪で遊ぼう」

 真奈未はどこからともなく黒ひげ危機一髪を取り出した。

 二人は楽しく黒ひげ危機一髪を遊んだ。


――45分後。

白花と真奈未は黒ひげ危機一髪に飽きてあやとり遊びに興じていた。すると、白花の母親が息を切らして屋上に入ってきた。

「白花! こんなところにいたの……探してたのよ!」

 白花は慌てた母親の顔を見て悪びれた表情をした。

「ごめん、実は同じぐらいの女の子と遊んでいて」

「え? そこにはいないわよ?」

 白花はびっくりして真奈未がいるほうを向いたがそこには真奈未はいなかった。

「え?」

「白花、早く帰るわよ!」

 白花はどこか釈然としない気持ちになった。


◆◆◆◆◆


――半年後。

 白花はどこかもやもやした感情を抱えながら学校生活を送っていた。真奈未は幽霊だったのだろうか? 今となっては確かめようがなかった。

 おりしも学校では転校生の話題にもちきりになっていたが白花はあまりその話題に乗り切れていないままであった。今日がその転校生が入ってくる日らしい。

 朝の会。担任の先生が真面目そうな表情をして児童たちを見渡す。

「皆さんも以前からご存じだと思いますが今日から私たちのクラスに新しい児童がやってきます」

 そして、教室の扉が開き転校生が入ってきた。白花はわっと息をのんだ。

「柿崎さんは長い間、入院生活をしていました。不慣れな学校生活をみんなでサポートしてあげてください」

――真奈未ちゃんは幽霊じゃなくて、生霊だったんだ!

 白花の小学校生活はにぎやかになりそうだった。



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