No.008 異世界の地図
今回異世界の地図が登場します。異世界と言いつつ“この大陸の”地図ですが...!
翌朝、マイケルさんに見送られながら詰所をでた。
ようやく本格的に異世界の街へと足を踏み入れる。ちなみにカメラは返してもらった。昨日マイラと話しているときに兵士さん達が来て「これは武器か?」と確認されたので、「違う」と答えたのだ。その結果嘘ではないことが伝わって返却された。
マイラによると「町中で持ち歩くことを禁じはしないが、余計なトラブルを起こす可能性があるからな」とマイケルさんが言っていたらしい。
ちなみに今日はこれから冒険者ギルドに行く。今から配信してしまおう。
「おーい!セツキ!こっちこっち!」
俺が配信準備をしていると、遠くからマイラが走り寄ってきた。今日も可愛い。
ジンバルをセットしてカメラを起動する。インターネットに接続してLIVE配信を開始した。
ちなみに昨日の夜、視聴者には掲示板で状況を伝えてたりする。今日の朝から配信することは告知済みだ。
「おはよ、マイラ」
「おはよ!セツキ!」
どうやら《意思疎通》の魔道書は使用済みらしい。
『マイラちゃん可愛い』『視聴者にも意思疎通の魔道書の効果あるのな』など、視界の隅にコメントが流れていく。
「改めて、今日からよろしくね」
「ああ、よろしく!」
マイラが手を差し伸べてきたのでその手を握り返す。
「じゃあ冒険者ギルドへ行こっか!」
「おう、確かあっちだよな?」
「うん。大きな看板があるから分かりやすいはずだよ」
実は今朝、四苦八苦しながらマイケルさんにギルドの位置を聞いたのだ。なんとかコミュニケーションに成功したときには俺とマイケルさんの間に謎の絆が生まれたほどだ。
「冒険者ギルドはね、この大陸中にたくさん存在してるの。国をまたいで存在するお店みたいな感じかな」
「そうなのか。俺、この大陸についても何も知らないんだよな...」
「大丈夫、全部教えてあげる」
見た人が誰でも見惚れるような笑顔を浮かべるマイラ。とても癒やされるし心の中の不安を総て消し去ってくれるような、そんな気さえする。
マイラは「たしかここに...」と言いながら小さなポシェットをあさり始めた。どう見ても腕がポシェットの底よりも下の位置をあさっている。これはまさか俗に言うアイテムボックス的なあれだろうか。
『アイテムボックス...?』『ボックスってよりはアイテムバッグやろ』『ポシェットっていうんやで』
視聴者も同じようなことを思っていたらしい。アイテムポシェットか。
「あった!これがこの大陸の地図だよ」
「どれどれ?」
「おお!異世界ぽい!!」
「え、異世界?」
「あ、いや、えーっと、今俺たちがいる場所ってどこ?」
マイラにじーっと見つめられている。これがジト目か!
「はあ...。まあいいけど! 私たちがいるのはここ。フラリア王国の自由都市ツイツだよ」
「自由都市ツイツ!」
「風の大精霊が守護しているフラリア王国でも有名な都市ね。ほらここ」
『風の大精霊?』『精霊もいるのか』
カメラで地図を写しながら、自分の目でも確認する。
「この自由都市ツイツは特殊でフラリア王国に属するけど、フラリア王の権力が影響しないの」
「どういうことだ?」
「簡単に言えばフラリア王国内にある独立国家みたいになってるの。特徴は...この都市には貴族もいないし、万が一戦争が起きても総ての国に対して中立を維持するって感じかな」
すごい。そんな都市を王国に設置できるフラリア王国は、恐らく強大な軍事力を持っているのだろう。独立した都市には他国のスパイや不満を持った国民が集まりやすい。つまり反乱が起きやすい都市ということだ。
「いろいろとすごいな、この都市」
「あはは、まあ普通は心配になるよね。でも王都には風神がいるから、ツイツの守護精霊が反乱を起こすことはないの」
なるほど? 反乱分子を風の大精霊が見張ってるのか。恐らく風の大精霊自体も強力な力を持っているのだろう。
「ちなみにこの国は――――」
―――マイラの説明を要約簡単にするとこうだ。
この国はフラリア王国。この大陸の中で唯一、三柱の神達が守護する国だ。三柱の神というのは光神、緑神、風神のことで、国民のほとんどがそのどれかの加護を受けている。
緑神の加護は農業や健康。
風神の加護は風による防御壁常時展開や視力向上。
光神は嘘を見抜くことや明るいところでの身体能力向上だ。
一見緑神の加護が地味に見えるが、戦闘を経験しない国民が普通に生きる分にはこれ以上ない加護だと思う。風神の加護の防御壁は矢が当たりづらくなったり、風の抵抗を受けなくなったりするらしい。そこまで強い防御壁って訳じゃないみたいだ。
光神の加護は兵士さんだな。嘘つかなくてよかった。
貴族がいるらしいがツイツにいる間は遭遇することはないだろう。
軍事力としては『翼竜に乗り空から攻撃する風神騎士団』『回復魔法と攻撃魔法のバランスがいい光神騎士団』『植物での行動阻害や高性能な回復魔法で味方を支援する緑神騎士団』がある。
この三つの騎士団がフラリア王国を守っており、その強さは大陸でも一、二を争うという。
「あ、ついたよ!」
「お?」
『うお、でけえ!!』『こんにちは、初見です。』『冒険者ギルドだ!!』
マイラの声でハッと顔を上げる。どうやら到着したようだ。
目の前には三階建てくらいはありそうな、一際大きな建物がそびえ立っていた。
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。
評価、感想、ブックマーク本当にありがとうございます!!!!!!!!!!!!