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No.002

妹登場!

「パンだ…」


 目の前には俺が買ったパンがある。

 異世界で地球産の物を手に入れられた。手に入れてしまった。やったねチートだぁ。

 ラノベ通りなら行き過ぎた力や未来の技術は危険視されて排除されかねない。立場とか寝床とかが確保できるまでは隠しておいた方がいいだろう。


「もうこの際原理とかは気にしない気にしない」


 使えるから使える、それでいいじゃないか。

 まだ残高に余裕はあるし、必要な物をもう少し買い揃えよう。


「まずは靴だな。考えないようにしてたけど、足痛い」


 実は裸足でした、てへっ。

 靴と言ってもたくさん種類がある訳だが、ここは動きやすさ重視で選ぼう。戦闘を考慮して防御能力高めの靴にしようと思ったけど、履きなれない靴はやめておいた方が良いかな。


「スキー靴なら履きなれてて防御能力かなり高めだけど、シュールすぎるな。普通に動きづらいし」


 そう呟きながらミリタリーグレードの高いスニーカーをカートに入れる。

 靴を買うに伴って靴下と除菌効果のあるウェットシート。水と食料を入れるリュック。タオルに護身用のナイフ。夜までに街に着きたいけど、一応頭につけるタイプのライト。

 バイト代貯めといてよかった。


「とりあえずはこんくらいかな。購入っ!」


 シュバッっと目の前が光ると、次の瞬間には購入したものが浮いていた。俺が触れると浮遊は終わり、重力が作用しだす。

 ウェットシートで足を拭き、靴下を履く。靴を箱から出し、サイズが合うかビクビクしながら足を入れる。どうやら丁度いいようだ。

 リュックに余分なものを詰め、ナイフを装備して準備完了。


「やっべぇ、異世界のハードルが一気に下がった」


 転移してからまだそんなに時間は経っていないが、安心感が桁違いだ。この調子なら生き抜けるかもしれない。


「そういやライトの充電ってどうすれば良いんだろ」


 リュックからライトを取り出し、本体を持つ。パソコンから充電できるタイプの物だから、もしかしたら《インターネット》のスキルで充電できるかなぁ、なんて。


《インターネット》を開き、ライトを近付ける。画面上にライトを重ねてみるが、特に何も起きない。


「くっ、流石にそれは無理なのか…? 電力消費系の道具が全部使い捨てになるのはつらいぞ…!」


 流石に無理だろうとは思いつつも、画面を更にいじる。パソコンと同じように横にUSBポートがあるのかと思い見てみるが、画面が薄すぎて何も無かった。


「っだぁ!神様とかがいるならスキルの説明くらいしろよっ!」


 この《インターネット》で何が出来て何が出来ないのか。せめてそれを教えて欲しい。


 充電を諦めきれずに未練たらしく画面を指で意味無く触る。


 ──────ニュイっ。


「んおっ!?」


 画面の端から画面外へと指をスライドさせとき、ニョロニョロした何かが出てきた。

 ニョロニョロしたコードの様な物の先端は俺の指先にある。


「まさかこれはっ」


 胸をワクワクさせながら、指を動かしてコードの先端をライトの充電する場所に持っていく。ゆっくりと移動させた先端部分はやがて、カチリ、という音と共にライトに接続された。


『充電中』


 スキルの画面の端に小さく表示された文字を見て、俺は右手を突き上げた。

 インターネットに繋がり、ショッピングもでき、充電もできる。このスキル、まさにチートだ。戦闘面では驚くほど役に立たないだろうが、生き抜くという点ではずば抜けて強い。異世界産のものをネットに売って金を稼げば、金が尽きる心配もない。


「最高かよ、《インターネット》!」


 そう呟いた俺は顔を上にあげ、青く暖かい空を眺めるのだった。


 ◇


 あれから1時間。

 俺は唐突に鳴り響くRAIN電話に驚いていた。どうやらこの着信音は俺にしか聞こえていないらしい。というのも、頭の中に直接響いてる感じがするのだ。

 《インターネット》を使い、RAINを開く。通話を掛けてきているのは妹の用だ。

 ちなみに、親友からも返信が来ており「へぇ、羨まし。んで、本当はどこいんの?」という悲しい内容だった。まあ、逆の立場だったらきっと俺も同じメッセージを送っただろう。こいつには後で詳しく説明しよう。

 今は妹だ。


「えーっと、応答応答っと…」

『お兄ちゃん!? 今どこなの!? 大丈夫!?』

「うおっ!?」


 頭の中に大きな音(?)で響き渡る妹の声。どうやら元気そうだ。


『聞いてる!? もう3日も帰ってこないなんて! てゆーか、なんなのこのメッセージ! ふざけてるの!?』

「おう、久しぶりだな希縁(きより)。 残念ながらふざけてないんだよなぁ。絶賛異世界遭難中だ」

『久しぶりだな、じゃないよ!? 近くで爆発事故があって、お兄ちゃんも帰ってこなくて、お兄ちゃん死んじゃったのかもって…!!』


 すごい勢いで喋っていた妹だが、後半になるにつれてその勢いは弱まり、ついには泣き出してしまった。


「心配かけてごめんな。俺は大丈夫だ。 きよりは大丈夫か?」

『うん…! わたしは大丈夫だよ。警察が爆発事故にかかりきりで捜索依頼を出せなかったんだけど、まさか異世界に行ってるなんて』

「爆発事故なんてあったのか。…もしかしたら俺がこっちに来たことと何か関係があるのかもな。今のとこ俺は大丈夫なんだが、とりあえずはどこか休める場所を探さなきゃ行けないんだ」

『休める場所…?』

「あぁ、何処か街か村か。最悪洞窟でもいいんだが、雨風を凌げて安全そうな場所を目指してるんだ。とりあえずの状況報告はさっきのメッセージを詳しく読んでくれ。後でもう少し詳しいことを送る」

『もう切るの…?』

「日付を見るに今って学校の昼休みだろ? 長電話する訳にも行かないし、俺も通話しながら歩くと危ないからさ」

『そっか…、わかった。気を付けてね!』

「おう、きよりをおいて死んだりしないから安心してくれ」

『うん、またね』


 タララン♪という音と共に通話が終わった。行方不明の兄と、両親を亡くした経験のある妹の会話としては短か過ぎるだろう。だが、俺の無事は伝えられたし現状で送ったメッセージ以外の報告は何も無い。

 きよりは学校で時間もないし、話を聞くのは今じゃなくて落ち着いてからでいいだろう。

 そう言いながら、視線を地面に移す。実は先程から、とある痕跡らしきものがあってそれを辿っていたのだ。


「…やっぱこれって!」


 もう1つ、通話を早めに切ったのには訳がある。

 俺の目の前には、車輪がつけたであろう4本の線。そして、馬の足跡らしきものが残された1本の道があった。


「道だ! しかも痕跡的に知的生命体がいることもわかったな」


 転移してから漸く、ただ適当に歩くだけの時間が終わった。

少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価してもらえると嬉しいです。


モチベに直結します!

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