知りたい
貴族の中でも、かなりしっかりとマナーを叩きこまれる家の人間なのだろう。
そういえば、エイミーに抱きしめられた時の香り……。高価な香木の香りがした。上位貴族なのかな。だけれど、同じ年頃の上位貴族男子であれば、お兄様と学園で顔を合わせているだろうし、名前くらい聞いたことがあると思うんだけれど。公爵家、侯爵家ではないということね。だとすると伯爵家か、ローレル様のように遠い領地に住む辺境伯?
ああ、だめ。何者だっていいじゃない。
お互いに詮索しないって約束だわ。って、約束はしていないけれど、家名を名乗らないというのが詮索するなっていう暗黙の了解だわ。
「お待たせ!」
エミリーが、大きなバスケットを手に戻って来た。
「え?それは?」
エイミーが、バスケットをあづまやの中央にある丸テーブルの上に置いた。それからすぐに、バスケットの上にかぶせてあった布をとってテーブルに広げ、中身を順に取り出して並べて行く。
ティーカップに、ティーポット。それから、3段重ねになったケーキスタンドを取り出した。
一番下に、サンドイッチ。二段目にたっぷりのフルーツ。そして一番上にはケーキが乗っている。
「まぁ、素敵。本格的なティータイムね。でも、どこから持って来たの?」
エイミーが可愛らしくウインクをする。
「あそこにね、侍女が出入りするための通用口があるのよ。迷路を通らなくてもすぐに外に出られるの」
ああ、そう言われれば確かに。このあづまやでお茶をすることもあるだろうし、そんなときに侍女たちがいちいち迷路を通ってお茶を運んでいたら、冷めてしまうわよね。何かあるたびに迷路を抜けるなんて不便すぎるものね。
私の質問はどこからというのはどこを通ってじゃなくて、どうやって準備したのかっていうほうの、どこから持って来たかだったんだけどな。
まぁいいか。
会場には山ほど食べ物も飲み物も用意されているだろうから、従者か誰かに頼んで用意してもらうことなど簡単だろう。
「ああ、私、お茶会も夢だったのよ!ねぇ、リリー、私の夢をかなえてくれるわよね?」
お茶会と言えば、舞踏会ほど大規模ではなく貴族のご婦人か女性を招いて交流を図るための会。
本当に少人数で行う場合もあるけれど、今回行われている舞踏会並みに大規模に行うものまで色々だ。
その特徴として、招かれるのは女性と、その女性の成人前、学園入学前の子供達だけで、男性は顔を出せない。
唯一顔を出すことが許されている男性は、主催者の家族だけだ。
エミリーのお母様はお茶会を主催されたりしないのかしら?……と、いけない。また色々詮索するようなことを考えてしまうところだったわ。




