ふれる
そうか。もっと女友達が欲しいと思っても、エミリーには無理だもんね。それなのに私……。
エミリーに謝ろうかと思ったけれど、謝るとまた傷つけてしまうだろうか。
「ねぇっ」
エミリーがぱっと顔を上げた。
「私は?私のことはどう思ってる?ローレル様よりもかっこいい?」
エミリーの真剣な目が私を正面からまっすぐ見ている。
かなりの勢いで聞かれたため、何も考えることができずに、即答した。
「全然、エミリーはかっこよくない」
エミリーが、ショックを受けた顔をする。
ええ、悲しませるつもりなんてないんだけど。なんで?
「そう、私は、ローレル……様のようにリリーに素敵だとは言ってもらえないのね……」
「何をっていいるの?エミリーも素敵よ。でも、かっこいいんじゃなくて、可愛いもの。エミリーは、とても可愛いのよ」
エミリーがちょっとだけ悲しい顔から復活。だけれど、かなりまだ不安げな表情をしている。
「合えなかった1か月の間にも、エミリーのことを何度も思い出して、コサージュを見たら目を輝かせて喜んでくれるかなぁとか。その様子が全部可愛いだろうなと思って……。その、私には、エミリーは飛び切り可愛い女性で、かっこいいとは違うの」
エミリーの顔が輝いた。
私が何度も想像の中で見ていた、飛び切りの笑顔だ。
「きゃーっ。うれしい!私のこと、いっぱい思い出してくれたの?感激だわ!わ、私も、リリーのこと毎日毎日考えてたの!」
エミリーの言葉に、私も胸がいっぱいになる。
「本当?私のこと毎日考えてくれたなんて……私だけが、エミリーに会いたくて仕方がないわけじゃなくてよかった」
1回少し話をしただけ、そして、また会おうと簡単に約束しただけ、それなのに、こんなに会えることを楽しみにするなんておかしいのかなって。私だけがそう思っていたら寂しいなって思ったから。
エミリーも私に会いたいってずっと思ってくれたんだと思ったら……。
「嬉しい、エミリー」
「ああ、リリー、なんてかわいい顔をするのかしら。貴方は私を可愛いって言ってくれるけれど、リリーの可愛さには到底及ばないわ……本当にかわいい。どうしよう……ねぇ、リリー、頬にふれてもいいかしら?」
エミリーがトロンとした目つきで私を見る。
理想の可愛さと言っていたけれど、エミリーには私はどう見えているのだろう。こんな風に生まれたかった……と、そういう気持ちを持って私を見ている?
「いいわよ。私も、エミリーの髪に触れてもいい?」
日の光でキラキラして柔らかそうなオレンジ色のエミリーの髪。
「ええ、髪と言わずに、リリーになら、どこを触られてもいいわ」
エミリーの手が、私の頬に触れる。




