名前
エイミー、中身はとても可愛らしい女性だけれど、姿はイケメンだった。
きっと、たくさん告白されて、いっぱいコサージュもらえるわよね?オレンジばかりじゃつまらないわよね。
「そうね。それがいいわ。それに、これなら本当にたくさん種類が作れるわね。オレンジの花に青いリボン……これは、逆に青いドレスにも合いそうね」
ローレル様の姿が浮かんで離れない。
プレゼントしたら迷惑かな?
ううん、ちゃんとこの間助言をいただいたお礼ですって言えば、ローレル様なら受け取ってくれるんじゃないかな?
ローレル様に婚約者や思い人がいるのかは分からないけれど、男性用のもセットで贈りましょう。
それからエイミーにはたくさん……贈ってあげたいのはやまやまだけれど、まだこの風習が広がっていないのにいきなりたくさん持っているのが見つかったら怪しまれるわよね。取り上げられるとショックを受けるでしょうから、一つだけ。
風習が広まれば「女性からたくさん贈られたんだ、モテるな」で終わるんじゃないかな。
ん?でも、贈られたコサージュをコレクションするのって「自分のモテ遍歴」を自慢するようでちょっと嫌な感じ?
まさか、モテ自慢目的じゃなくて「かわいいわ!コサージュのお花畑ができたのよ!ああ、もうずっと見ていられるわ」目的だとは誰も思わないだろうし……。ふふふ。
仕立屋は、コサージュを全て置いて帰っていった。
青、レース、オレンジ濃淡、ピンク、黄色。
「んー、一つだけか。エイミーが一番喜ぶものはどれだろう……」
やっぱりピンクと組み合わせた物かな。
でもレースも捨てがたい……。
右手にピンク、左手にレース。
右手を上げて、左手を上げてと繰り返す。
「ああ、決められないっ!」
そうだわ!
いいことを考えた!
ピンクのコサージュに、レースで縁取り編みしたリボンをつければ、どっちん要素も含んでよりかわいくなるんじゃないかしら?
レースの縁取り編み、結構得意よ。かわいいから好きだし。
早速、作業をするために裁縫道具を取り出す。リボンの両脇に白い糸で縁取りをするための縫い目を作る。
そこにかぎ針をさしてレース糸を通しながら編んでいく。。
ふと、思いついて、リボンの結び目になる見えないところにイニシャルを刺繍することにした。
エミリーのEを。
……。いや、この場合は、エミリオのEかな?男性用グッズだし。
……とはいえ、そもそも、エミリーはエミリオなんだろうか?本当の名前?
私が公爵令嬢として名乗らなかったように。あの場にいれば、当然貴族で、家名もあるはず。
だけれど、私たちは、家名も名乗らず、私は愛称のリリーだけを口にした。
エミリオも、本当の名前は違うかもしれない。




