寂しがり屋
隣にエミリーが座っていることを想像する。
うん、エミリーにかわいいもの見せてあげることもできるわよね。それに、エミリーの髪の毛もオレンジだから、きっと映えるわよね。
あら?
ドレスを着るのは私よね?エミリーの髪と映えるっていうのも変な言い方よね?
でも、オレンジ色のドレスを作ってもらえば、ついでに同じ布でリボンとか何か小物も作ってもらえるわよね?
それをまたプレゼントしましょう。
エミリー喜んでくれるだろうか?まぁ素敵よ、素敵!と、頬を染めて喜んでくれる姿を想像して、うれしくなる。
ああ、他にももっと、エミリーに喜んでもらえることってないかしら?
と、色々と想像していたら、あっという間に時間が過ぎていた。
兄が私を探してあづまやに現れた。
「ああ、エミリーこんなところにいたのか。探したよ」
兄と小さいことによく迷路で遊んだので、兄も私がここを知っていることは分かっている。だから、もしかしてと思って探してきてくれたんだろう。
「ごめんなさい。少し気分が悪くなってしまって……」
嘘ではない。
そもそも気分が悪くなってここに来たんだもの。ただ、ずっと会場に戻らずにここにいたのは、エミリーのことを考えていたらうっかり時間が過ぎてしまったから。
そもそもの目的を忘れたわけでは……いえ、忘れてましたけど。でも、今日のドレスでは悪目立ちするそうなんで、今日はやめてよかったんだと思うんです。
「大丈夫かい?ああ、手が赤くなっているじゃないか……!アレルギーが出たんだね!」
お兄様が私の手首を見て慌てた。
しまった。手袋をはめるべきだったわ。驚かせてしまったようだ。
「すまない……一緒にいてやれなくて……」
「ふふ、分かってますわ。婚約者のエカテリーゼ様は寂しがり屋なんでしょう?」
寂しいの。が口癖のご令嬢だと聞いたことがある。
「あ、ああ、そうなんだ。僕がそばにいないと寂しがって、その」
他の殿方に、婚約者が相手にしてくださらなくて寂しいんですと、涙ながらに訴えるらしい。
なんというか、男性アレルギーの私からすると、信じられないんですけど。側にずっと誰かいてほしいなんて、考えたこともないので。
家族でさえ、不用意に触れればアレルギーが出てしまうんですもの。
よかった。私は寂しがり屋じゃなくて。
そう、この舞踏会、出会い目的のお見合いのようなものなのに、婚約者のいる者も参加しているのは、それぞれが仲を取り持ったり紹介したりするため。いきなり自分からアプローチできない人も多いので、婚約者のいる方にお世話を頼むのだ。




