リメイクすれば?
「そうでしょう?それなのに、お母様が仕立て屋の言葉に……殿下のハートを射止めるにはオレンジのドレスを着るべきですと言われて……」
はぁとローレル様がため息をついた。
「あの、好きなドレスを着ちゃだめなのですか?」
ドレスを着ることもできないエミリーの顔が浮かんだ。
せっかくドレスを着られる立場なのに、それでも自分の好きなドレスを着ることができないこともあるの?
「それは、貴方のこと?私のこと?」
「え?」
「……ふっ。そうね。そうだわね。好きなドレスを着ればいいのよね……。殿下だって、ドレスで女性を選ぶような馬鹿ではないはずよね……」
そうですね。もし、ドレスで女性を選ぶような方が後の陛下、ドレスだけで選ばれた女性が後の王妃殿下……っていう国に済むのは不安があります。
まぁ、さすがにあまり問題があればお父様が何か口を出すでしょうが。公爵家にはそれくらいの力はある。
とはいえ、お父様もお兄様も、皇太子殿下については本当に何も話をなさらないけれど……。問題がある方なのか、それとも問題がない方なのかということすら聞いたことがない。
「吹っ切れましたわ。貴方のおかげで、ありがとう」
なぜかローレル様にお礼を言われた。
「ああ、でも、貴方は、お母様に言われたとか、ご自分の趣味とかだったとしても、そのドレスでは貴方の魅力が全然引き出せておりませんわよ」
お母様には10歳を過ぎてからは何も言ってもらえない。亡くなってしまったから。想い出の中の母の言葉は10歳までの私にむけられたものだ。
もし、今の私のドレスを選ぶのだとしたら、どのようなドレスを選んでくださったのだろう。
仕立屋のように「お嬢様は何でもお似合いになります」なんて言わなかっただろう。
お父様のように「これは胸が出すぎている、ダメだダメだ」とも言わなかったかもしれない。
お兄様のように「母上はリリーにはこういうのが似合うと言っていたじゃないか」と言うこともないだろう。
ふと、お母様が今生きていたら、ローレル様のように、魅力を引き出せないと言ったのではないだろうか。
「お金が無くて新しいドレスが仕立てられないとしても、このフリルはみっともないわ」
ローレル様が、私の服の胸元に、幾重にも重なっているフリルを手に取った。
「リメイクすればいいのよ。フリルは取って、ウエストを搾って」
リメイク……。
えーっと、新しいドレスを仕立てるお金がないわけじゃないんだけれど、なんだか結構男爵令嬢だと思われているのは、このドレスがお金がなくて仕方なく着ていると思われているせいなのかしらね?




