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男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~【異世界ロマンス】  作者: 富士とまと


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「囲まれる前に出ようか?」

 兄の優しさに頷いて、会場を後にした。

 壇上から私とお兄様の様子を見ていたお父様が小さく頷いているのが見えた。きっと、気分が悪くなって帰ったと思っただろう。

 馬車の中でも、お兄様は、私をとても気遣い心配してくれた。

「部屋で休めば大丈夫です。それより、お兄様ごめんなさい。一緒に帰ることになってしまって」

「馬鹿だな……いいや、そんな言葉を出してしまうようになったのは私の今までの行いのせいだね……。すまないリリーシェンヌ。これからはお前が何があっても一番だよ。結婚相手には……リリーを大切にしてくれる人を探すよ。それが最低条件だ」

 そうだ。お兄様は婚約解消したばかりなのだ。

 あの話の内容からすると……

 エカテリーゼ様が浮気をしていたということ?お兄様のような素敵な婚約者がいつのに……。寂しさのあまり?

 それとも、お兄様よりも愛する人ができたということかしら?

 もし、そうであれば、お兄様と婚約を解消したら、その人と一緒になれるってこと?エカテリーゼ様はむしろ愛する人と結ばれて幸せになれるっていうことかしら?

 お兄様は愛する人を失い……傷ついたというのに。……いえ、ちょっと待って。

 お兄様はエカテリーゼ様を愛していなかった。愛する努力をしていたと言っていた。それで、結局エカテリーゼ様は浮気……というかもしかすると真実の愛に目覚めたというなら。

「お兄様、最低条件は……お兄様が愛せる人が良いと。お兄様を愛してくれる人がいいと思います。私とお兄様の中を嫉妬するくらい、お兄様のことを愛してくれる人を探してくださいっ」

 お兄様がくすりと笑った。

「それは難しいな」

「え?どうしてですか?」

「リリーを大切にしてくれない女性を愛することなんてできそうにない。むしろ、リリーとばかり仲良くして私は仲間外れになってリリーに嫉妬してしまうような人がいればいいのに」

「それって、私の友達っていうことですか?」

 もし、私が普通であれば。

 小さなころからお茶会に通い、今頃は学園に通って、中の良い友達が出来ていたかもしれない。

 私が友達もいなかったから……。

「い、いや、そのローレル嬢のことではなくて」

 は?

「ローレル様?」

「いや、その、具体的に誰かをさしているわけじゃないからな?ご、誤解するなよ?」

 そう……か。

 お兄様は婚約者がいなくなったんだ。新しく婚約者を探さないといけない。

 ……と、いうことは、あのパーティーに来ていたローレル様も、アンナ様もハンナ様もみんな私のお義姉様になる可能性があるっていうことでは?!

 男性アレルギーのある私は……。

 女性だけで暮らす修道院へ行こうと思っていた。

 ああ、だけれど……。

 もし、お兄様がローレル様のような方と結婚するのであれば、屋敷の片隅に部屋を貰って暮らそう。

 ポロリと涙がこぼれおちる。

 エミリー……エミリーと一緒の未来を夢見ていた。だけれど、それが叶わなくても……。前を向いて生きていかなくちゃならないんだ。

「ど、どうしたんだ、リリーっ!」

「いえ、何でも……ないんです……。ただ、もし、ローレル様がお義姉様になってくださったら、とても幸せだと思っただけで……」

「そうか……ローレル嬢……」

 お兄様が私の言葉に何か呟きをもらした。

「すまない、やはり、エカテリーゼの仕打ちに我慢していたんだな……」

「仕打ち?」

「いや、なんでもない!それよりリリー、次の公爵家のお見合いパーティーには、一緒に行こう。私もはれて独身者だ。誰かの仲介ではなく、私自身が探す必要が出てきたからね」

 お兄様の言葉にハッと息をのむ。

 エミリーは……きっと、来ないだろう。記憶喪失になったシェミリオール殿下……。

 断片的に記憶が戻ることもあるようなことを言っていたけれど……。

 噴水の奥の東屋のことは覚えているのだろうか?

 いや、覚えていなかったとしても、あの植木鉢を用意させたのはシェミリオール殿下だ。もしかすると、相手がだれかまでは調べても分からなかったけれど、会っていたのは東屋ではないかくらいは、調査で判明しているのかもしれない。

 だとすると、東屋に女性が現れるのではと、シェミリオール殿下は足を運ぶ可能性がある。

 ……エミリーの顔を思い出す。

 かわいいわ……と、頬を染めて私の姿を見るエミリー。

 婚約するんだもの、良いわよね?……と、口付けられたことも思い出した。

 ドキドキして、フワフワして、嬉しくて……。私はエミリーが大好きで。エミリーの嬉しそうな瞳に移る私の姿は見たことも無い顔をしていた。あれは、恋に浮かされた顔……なんだろうか。

 私はエミリーのこと、大好きだった。女友達でも側にいられるなら嬉しくて。

 うつむいて、ぎゅっとスカートを握りしめる。

 シェミリオール殿下に挨拶をしたときのことを思い出す。

 私の顔は見たけれど、私の声も聴いたけれど……。まるっきり興味がないという顔をしていた。

 あれは、エミリーと同じ顔をしている、別の人だ……。

 同じ顔をしているのに別の人……。辛い。辛い。会うのが、辛い。エミリーの姿形、声をしているのに……。

 私のことを知らない人。


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[気になる点] 誤記:いるのにカテリーゼ様が浮気をしていたということ?お兄様のような素敵な婚約者がいつのに……。 誤記:”あづまや” 噴水の奥の東屋のことは覚えているのだろうか? 誤変換:仲 小さ…
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