女性でしょ
……そうだよね。唯一の理解者のお姉さんは他国へと嫁いでしまい、両親ですら理解してくれないなんて。
それに比べたら、私は父も兄も私のアレルギーを理解してくれている。
父だって……本当はもっと無理にでも結婚させることだってできるのに、私のことを思って「平民でも構わない」とまで言ってくれた。
あ……。
「ねぇ、エミリー、もしかしたらご両親はエミリーのことをとても心配して、貴方が不幸にならないようにと、口を酸っぱくして言っているんじゃないかしら?もしかしたら、本当は認めてあげたいと、そう思っているけれど……。私の父はね、男性アレルギーがあるって知ってるのに、結婚しろっていうのよ?修道院に行きたいって言ったら激怒してしまって……。だけど、きっとそれもお父様は私のことを考えてくださっているのだと思うの……」
エミリーが私の頭をそっと撫でてくれる。
「そうね。私の両親も、私のことを考えてくれているのよね。って、そんなことよりも、大丈夫なの?リリー、結婚させられるって、男性アレルギーがあるのに……」
ふふっと笑う。
「あのね、お父様やお兄様は一緒にいても大丈夫だし、少しふれられたくらいならちょっと赤くなってすぐに収まるの。だけど、ほら、この腕をつかんだ人は一緒にいるだけであちこち痒くなるし、捕まれたところは炎症を起こしちゃうし……。人によってアレルギーの出方が違うから、あまりアレルギーが出ない人を探しなさいって。男爵家でも平民でも誰でも構わないとまで言ってくれたのよ?」
「私みたいに、全くアレルギーが出ない男性もいるかもしれないわね」
「何言ってるのよ、エイミーは女性でしょ?アレルギーが全く出ない人がいたら、きっとエイミーと同じよ。見つけたら一番にエイミーに教えるわ!」
エイミーがくすくすと笑った。
「そうだったわ、私は女だったわね」
ふと気になって尋ねる。
「エイミーは大丈夫なの?結婚とか……その、必要のない人もいるけれど……」
男子の場合家を継ぐ人間がいれば、結婚はどうしてもしなければならないというものでもない。次男、三男などだ。
「弟がいるから、跡継ぎは弟にすればいいと言って、のらりくらりとかわしているんだけどね……問題はどうもそこじゃなくて、女みたいな部分が、結婚すれば治るんじゃないかと思っている節があるのよ……だから、結婚させたくて仕方がないみたい」
「そっか、エイミーも大変ね。別に結婚できなくたって全然構わないのになぁ……」




