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気分が悪いと言って王都への出発を後らせること2日。
ローレル様にもアンナ様ハンナ様にも、とても心配されいる。
仮病を使っているのは心苦しいけれど、皇太子がさらわれたというのは極秘時効で教えるわけにはいかない。
だけれど、このまま体調が悪いと言って引き留めるのも限界だろう。
ちょっと休めば大丈夫だと言っているけれども、お医者様を呼びましょうだの、このまま王都に向かった方がゆっくり休めるんじゃないかと言われたり、ローレル様が慌てふためいている。取りあえず使いの者を公爵家に出そうというところで話がまとまったようだ。
「あの、手紙を書きますので、使いの者に渡してもらえるようにお願いできますか?」
アレもコレも止めるのもおかしいと思い、使いの者を出すことは止めない代わりに、利用させてもらことにする。
ローレル様たちを引きとめ続けるのも難しい。事情を説明したいと。
ローレル様たちは口が堅いし、信用できるから大丈夫だと……。
それから、どうなっているのか続報がもたらされたならばすぐに教えてほしい……。
ああ、エミリーは無事なのだろうか。
手紙を書く手が震えてしまい、上手く書き進められない。
体調が悪いと言ってベッドにずっといたけれど……することもなく、ただベッドに横になっていると、悪い考えばかりが頭をよぎる。
エミリー……どうか、無事で。
エミリーが皇太子だからこそできることがあるとそう思ったけれど……。今ほど、エミリーが皇太子でなければよかったのにと思うことはない。
皇太子でなければ、こんな目にあうことはなかったのに。
ああ、でも、皇太子だからこそ、皆が必死に助けようとしてくれるのかもしれない。これが、もう少し立場の低い者であれば、見殺しにされる可能性だってある。
いや、ずっとずっと下の兵であれば……最前線に出戦う立場の者だったら、亡くなったということが伝えられないままっていうこともあるあだろう。戦争が終わって戻ってくるまで心配し続けないといけないのかもしれない。
戦争なんてなければよかったのに。
やっとのことで、手紙を書き終えたころには、すでにお昼を過ぎていた。
「大丈夫ですか?」
手紙を持ってローレル様の部屋のドアを叩くと、すぐに心配そうなローレル様の顔がドアの内側に現れた。
「ええ、良くなりました。ほ、ほら、私……学園にも通っていなかったので、体力がないのです」
何度か口にした言い訳を繰り返す。
「……そういえば、舞踏会でも何度か気分を悪いしていましたわね……。ごめんなさい。もっと私の方が気を使うべきでしたね」




