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キラキラ輝く金髪は触るとサラサラでずっと頭を撫でて居たくなる。


「……カイン、私が居なくなったらお父様とお兄様をよろしくね」


「嫌です!お嬢様が嫁がれるなんて!しかもそんな厄介なやっ……モゴモゴッ」


大きな声で叫ぶカインの口を手で塞ぐ。

さすがに不敬な発言は声高に発するものでもない。


「これからもお父様達の手伝いをしてくれるのならば、少しは私達以外の人間との接し方を学びなさい。このままだと貴方の咎がお父様達の咎になってしまうわ」


「………はい」


「今日はもう遅いから仕事はまた明日。今日の分も頑張りましょう?」


「はい、もちろんです。ではお送り致します」


話をしている間に辺りは茜色に染まっていた。

あっという間に闇に包まれてしまうだろう。

ほぼ毎日夕刻には二人で迎えの馬車に乗り、カインは私の家まで送り届けると近くの教会へと歩いて帰っていく。

孤児院も兼ねている教会は家の裏手の小高い丘にある。

父はそこで暇を見付けては奉仕活動をするのが常で、カインはそこで父に気に入られたのだ。


「今日はお父様がいらっしゃるから、久しぶりにお父様と帰るわ。カインはいつも通り馬車で帰っていいわよ」


「え、領主様とお約束を?」


「ええ、また明日ね」


ジッと顔を見つめてくるカインに笑顔を向けて立ち上がり、見送ろうと扉へ促す。


「シルヴィア様もお気を付けて下さい」


「お父様がいらっしゃるから大丈夫よ」


心配そうな眼差しで歩みの遅いカインの背をさり気なく押す。

廊下を歩くのも階段を降りるのも外に出てからでさえカインは呼び止められるのを待っているかのようにチラチラとこちらを見る。


「では…」


「明日もよろしくね」


私が何も言わないから諦めたのか、元気無く頭を下げると馬車へと乗り込んだ。

そしてゆっくり帰路へと走り出した。


「よしっ!」


私は踵を返し資料室へと小走りに急ぐ。

部屋へ入るなりランプを灯し、メガネを取って髪を解いた。

長くて煩わしい前髪を頭頂部に後ろ髪と一緒に括り、巻き付けてお団子にする。

袖を捲くって資料が綺麗に整列している棚へと移動する。


「ルーファス様が輸入品に興味を持ったのは確か…1年前というお話。なら1年半前から調べれば誤差が分かるかしら」


カインには話さなかったが、父は最後にこう言った。


「シルヴィアを差し出す事はしない。王家の申し出を拒否するという事は最悪、一家全員打首だ。だが私は家族を護りたい。私達は全てを捨てて逃げるのを辞さない。しかしそうなった時お前は必ず自分を責めるだろう?それだけは駄目だ。これは家族を護りたい私とマイオンの我儘なのだから」


と。

そんな事言われて、はいそうですか、とはなれない。

家族を護りたいのは私も同じだ。

嫁いでも父と兄の足枷になる。

嫁がなくても家族を謀反人にしてしまう。

こんな理不尽なもの絶対に嫌だ。

どちらに転んでも最低なら、これ以上最低にはならないだろう。

そんな考えで、私は何も出来ない小娘だけど最後まで悪あがきしようと決意した。



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