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18歳ともなると普通の貴族は結婚や婚約をしているもの。

自分の容姿が残念と噂されているのを分かっていながらも、こんなに周りより出遅れて取り残されるとは想像していなかった為、父の言葉に少なからず安堵していた。

こんな私でも嫁に欲しいと言ってくれている、それだけで嬉しかった。


「お相手の方はどなたですか?」


「……、…、……っ…」


向いのソファに腰を掛けた父が口を開けたり閉じたり、目を彷徨わせたかと思えば手元に落ちる。

そんな挙動不審に溜め息が漏れそうになるが、お腹に力を入れてそれを留める。


「お父様、私ももうそういう歳なのです。お父様が決めた方なら驚きも不満もありません」


わざと細くしていた目を開き、化粧品で描いたそばかすが消えない様に気を付けながら前髪を掻き分ける。

そして母似の笑顔を見せて落ち着かせる。

父は母似のこの顔にめっぽう弱くいつもなら頬を染めて落ち着きを取り戻すのだ………が、今回は失敗に終わった。


「私がこんな結婚承諾するわけがない!!」


火に油を注いだかのように父の感情が悪い方へ燃え上がってしまった。

座る二人を挟むテーブルを物凄い音を立てて殴り、額に血管を浮き上がらせながら真っ赤になる。

先程までとは180度違う態度にまばたきを忘れて凝視する。


「権力なんかに物を言わせる奴は本当に嫌いなんだ。子供の結婚を政治に利用するやり方も私は間違ってると思うし、結婚には愛が必須だというのも声を大にして言いたいっ!!」


父と母は大恋愛の末に結婚した。

兄も爵位を継ぐ身だが好きな相手と結ばれなさいという両親の助言で、今は私付きのメイドで姉のように慕っているアンルーシーと密かな愛を育んでいる。

かく言う私も教会から通う孤児のカインを密かに思っている。

だが、それを知るのはアンルーシーと兄だけ。


「で、その権力を盾に結婚をさせようとしているのはどこのどなたですか?」


「ルーファス様だ」


「ん?……………もう一度お願いします」


「第1王子のルーファス様だ」


このアバンムーラ国の王には1人の正室と3人の側室がいる。

正室には息子が1人。

側室にはどのような内訳かはしらないが、息子が2人と娘が3人。

王位継承権は正室の子供と決まっているが、その息子は年齢的には3番目の子供で第3王子。

すなわち、第1王子とは側室の息子ということで王位継承権はない。


「あの、なぜ王族が私を?」


「ルーファス様はこの地域では有名な方で異国からの品を好んで買う方だ。だが良い意味で有名ではなくて不当な値下げ交渉や、権力を盾に献上しろと迫ったりと、私達からしても困った人物なんだ」


「謎が深まりました。私に目を付ける意味が分かりません。私は公爵でも侯爵でもなく子爵家の娘ですよ?」


「お前が私の娘でマイオンの妹だからだよ」


落ち着きを取り戻した父の声が見るからに元気を無くしていった。

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