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その日もカインの姿は見られず、時間を潰しに図書館に足を運んでいた。

軟禁状態で唯一図書館だけが許された場所。

確かに王城を好き勝手歩いて良いはずもないけど、毎日のように父の仕事を手伝っていた私にはこの無駄な時間が許せなかった。

カインには会えなかったけど扉の前に立っていた護衛の人に話をしてカインに図書室への出入りを許可してもらったのだ。

ここなら膨大な本があってこれから父の仕事を手伝う時にでも役に立つ勉強が出来ると思う。


「えー、私が実家に呼ばれてる間に色々有り過ぎだよ!」


少し奥まった場所にある本を眺めて読みたいものを探していた時にそんな声が響いた。


「しっ!そんな大きい声出さないでよ!」


「だって、第一王子のルーファス様が投獄されて、行方が分からなかった第三王子の王太子様が帰還されて…それだけでも驚くのにルーファス様の側室になる筈だったアンダーソン家のご令嬢が王太子殿下の婚約者になって登城するなんて、そんな面白い事を見れなかったのが悔しかったんだもの」


本棚の影に使用人のお仕着せに身を包んだ侍女が二人。

城で働いているということは何処かのご令嬢なのだろう。

そんな二人が楽しそうに目を輝かせて私に気付かずこそこそ話を続ける。


「ルーファス様は皆知っている事だとは思うけど、ついに証拠がでてしまったのね」


「しかも行方知れずの王太子様がその証拠を持って現れたんですって」


「凄く素敵な方だったわ」


「キラキラしていて…一度だけのお手付きでも良いから側に行きたいわ」


「あ、婚約者を連れてきたんでしょう?なんで投獄されたルーファス様の側室候補なんて選んだのかしら」


「噂ではルーファス様の悪行に手を貸していたご令嬢らしいわよ。でもルーファス様の証拠は出てきたけど、そのご令嬢が手を貸していた証拠が見つからなかったとか」


「だから王太子殿下が側で監視しているの?」


「王太子殿下の部屋の隣、王太子妃殿下が入る筈の部屋に入れているそうだから監視なんじゃない。だって忙しいのに監視だなんて側に置かないと大変だもの」


「そうよね。今って隣国の王女様が王太子殿下との婚約を進める為に来ているのよね。そのお相手で忙しいのに監視までしなくちゃいけないなんて辛いものね」


「とても可愛らしい王女様で王太子殿下と並ぶと素晴らしい絵画のようだったわ」


「監視の為とはいえ一介の子爵ごときが王太子妃殿下の部屋を使ってるなんて王女様に知られたら大変じゃない?」


「だから軟禁状態らしいわよ。王女様との会談が全て終了するまでは本人に気付かれずに拘束するって話」


「それはそれで嫌ね。私ならさっさと自供しちゃうわ」


「あの部屋を使わせてもらっているから勘違いでもしているのではない?」


「わぁーそれは恥ずかしい」


クスクス笑う声が遠ざかって行く。

そうか。

そうなんだ。

私はルーファス様との共犯を疑われていてカインは仕方なく王城へ連れてきたのだ。

家族がここから私を出してくれないのも疑いが晴れていない私を連れ帰る事が出来ないから。

部屋から出てはいけないのに図書館の出入りを許可したのは昔馴染みだったから。

全部が繋がってしまった。

そして隣国の王女様が結婚相手という話。

ショックを受けた胸に失恋という傷まで付いてしまった。

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