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和やかな雰囲気の3人に少しだけ今の状況を忘れそうになってしまう。

兄弟仲の事は分からないけどカインが私達と生活を共にしていたと言うことはあまり仲が良くない以前の問題かも知れない。

そこに私が兄であるルーファス様の側室として指名されたせいでカインは王宮に戻って来る事になってしまった。


私のせいで……違う。

私の為に…だ。


カインが王宮に住まずに教会で平民として生活していたのも謎のままだが、ここまで過ごしてきた物を捨ててまで私を助けてくれるのも謎。

確かに家族もアンルーシーもカインも私の事を大切にしてくれているのは分かってた。

嬉しかったし、私も周りの人を大切にしたいと思っていた。


「お兄様、お父様とお母様の容態は大丈夫ですか?」


「ああ、驚いただけだから少し休めば平気だよ」


私の頭を撫でながら笑い飛ばす兄。

カインが反対側に回り込んでその手をやんわり遠ざける。


「ん?」


「シルヴィアはまだ本調子ではありませんのでそろそろ…」


カインを見るととても良い笑顔だが、目が笑っていないというか。

そんなカインの様子に気付いたアンルーシーが兄の手を取る。


「積もる話はまた明日に致しましょう。旦那様と奥様のご様子も見てきましょう?」


「またなシルヴィア」


「おやすみなさい。お兄様」


アンルーシーに引き摺られるように部屋を出ていく兄の姿を見送ると、顔に何かが近付く気配がした。

そっと見てみるとカインの顔が凄い近くにあるではないか。


「カっカイン…ラルフ様」


まだこの名前には慣れそうにない。

どうしてもカインと呼んでしまいたくなる。


「シルヴィア」


ちょっと待って。

今気付いたが、カインは私を『シルヴィア様』とか『お嬢様』と呼んでいたはず。

名前呼び捨てなんて頭の処理能力が追い付かない。

顔が赤くなるのが自分でも分かり、上掛けの端を握り締めながら恥ずかしさに体が震えてくる。

ダメ。

今度は気絶なんてしない。

聞きたいことが沢山あるんだから。


「あ、の…ルーファス様は?」


「はぁ…最初に聞くことがルーファスの事ですか」


カインの盛大な溜め息に質問内容を間違えた事を悟る。


「あの、でも」


「シルヴィアの救出の後直ぐに監査が入り、今はミュルヘと一緒に牢に居ます。相変わらず横柄で我儘し放題だそうですが、今回の件は流石に王もお手上げのようです」


淡々とそして冷たさのある言い方に違和感しか感じない。

家族の事を話しているとは思えない雰囲気に手を伸ばしてサラサラの金髪を優しく撫でる。

いつもより綺麗に整えられている髪は触り慣れた感触がした。


「あ、申し訳ありません」


ふと目の前の人物が王太子である事を思い出す。

手を上掛けの中に隠して目をそらす。


「お願いです。私をカインと呼んで下さい。今までのように触ってほしいのです」


絞り出すような声音に視線を戻すと、悲しそうな表情があった。

幼子が迷子になったかのような頼りない顔に胸が苦しくなる。

今までのカインは偽りではない。

そう確信していても王族と分かったからには態度に注意しなければならない。

カインの願いと周りの目、私はまだハッキリと動かない頭を稼働して真剣に悩んだ。

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