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カインが扉を開けるととても広い空間に所狭しと木樽や木箱等の荷物が置かれていた。

荷物によって作られた道を歩いていくと灯りが視界に入る。

振り替えったカインと目を合わせると同時に頷き、私は持っていた扇子を開いて口許を隠した。


「あの、すみません」


「誰だ」


カインが低姿勢な態度で声を掛けながら灯りの方へ歩いていく。

私はそのまま荷物の陰に残り、そっと様子を伺った。


「マティオン様に紹介頂いてこちらに来ました。とても珍しい商品を扱っていると聞いたので、見せて頂きたくお願いに上がりました」


「ああ、貴方が…。私はマティオン様の補佐をしております、ミュルヘと申します」


「私はある方の名代をさせていただくラルフという者です」


「ある方?」


ミュルヘの声色が訝しげに揺れる。


「あの少し位が高いお嬢様で名前を申し上げるのはここでは出来ないのです」


「そう、ですか」


間違いなくカインを怪しんできている。

物陰から顔を覗かせる事すら出来ない状況で、ハラハラドキドキと落ち着かなく扇子を握りしめた。


「お嬢様はある高貴な方の茶会でこちらの商団で珍しく価値が高く、他では絶対に手に入らない物を頼めるとお聞きになりました。お嬢様はそういったもの好きでどうしても見てみたいとその方にお願いした所、その方が密かに匿っていた褐色の肌の美しい女性に会わせていただいたそうです」


暗に王子と繋がっていてその筋からお前を教えてもらったと匂わせる話。

最終的に知りたいのはルーファス王子との繋がり。

一から探るよりはこちらの方が手っ取り早い。

けど、危険は高い。

王子に確認を取りたくても一介の商人であるミュルヘに話が出来る機会などすぐには無理だろうというのが今回の作戦の肝だ。

ミュルヘがルーファス様に確認が取れてしまう時には私たちは夜逃げした後か、婚約を解消した後だろう。

勿論、私はそんな人身売買まがいの人物には会ったことはない。


「あの方が…そうですか」


カインの演技も大したものだと関心しているとミュルヘも納得したように空気が軽くなった。


「実は今日そのお話を伺おうとお嬢様がお越しなんです」


カインの言葉に私は顔を扇子で半分隠しながら、滅多に着ないドレスの裾を捌き、優雅に登場する。

傲慢な令嬢は自分から話かけることはないし、気に入らなければ返事すらしないと聞いたことがある。


「ミュルヘと申します。お嬢様にお会いできて光栄です」


背はカインより少しだけ低く、少し痩せこけている印象の人だ。

髪は白髪が混じったダークブラウン。

目は細く鋭く濁ったような深緑で筋肉の塊ではなく、スレンダーだ。

思っていた印象と全くの別人が現れて、私は目をしば叩かせた。


「お嬢様は早く商品を拝見したいそうです。今何かありますでしょうか?」


私の目元だけで私の状況を瞬時に把握するカインは本当に優秀だ。

私はカインの言葉に頷きかけて、ふと考えた。

傲慢令嬢がこういう場合どのような態度を取るのかが分からなくなってきてしまった。


「こちらにどうぞ」


何の反応を見せない私をチラチラ見ながらミュルヘは私達が来た道を戻り始めた。

カインは私の背中に軽く触れ、先を促す。

考え込んでも仕方がない、今さら私には演技など無理だ半ば諦めが入りながら、ミュルヘの後へ続いた。

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