1.異世界に落ちまして
夏の暑さと休みテンションにやられて書きました。暇潰しに読んでみてください。
不定期更新です
人生何があるか分からないとはよく言うが、流石に現実にこんなことがあると呆然とせずにはいられない。少しは落ち着いて来たけれども、未だにこの状況を理解出来ない。
否
頭が否定しているのだ。
「…………マジか」
ここは森の中、近くには川が流れている。
川の向こう側に、虹色の木の実がなっている木があり、すぐ側には光輝く花がある。
空を見上げれば、翼の生えた白馬が、鎧を着た騎士らしき人物を乗せて飛んでいるのが見える。
「…………異世界」
どうやら俺は、異世界に落っこちたらしい。
今から数分前、俺は地球の日本にいて、三社目の面接に行く途中だった。とても暑く、喉が渇いていた俺はたまらず自動販売機から水を購入し、公園のベンチに座って喉を潤していた。
時間もまだあったので、暫くぼうっとしていた。よし行くかと立ち上がって、一歩進んだら━━━
『は?』
まぁ、そんな言葉しか出ないよな。さっきまで地面だったハズなのに、そこには黒い穴がぽっかり空いているだけで、足を踏み出してしまった俺は、ただただ落ちていくだけだった。
途中で意識を失い、目を覚ますとここにいた。このファンタジーな世界に
「さて、帰れないと考えて行動するとして、先ずは持ち物の確認だな」
自分に言い聞かせるように独り言を言い、持ち物を確認する。先ずは、来ているものだが、ワイシャツにスーツ、ズボン、くつしたに革靴、ネクタイ。スーツを脱いでワイシャツになり、着崩す。ここは、動きやすさ重視だ。
続いて、カバンの中。
スマホ、財布、ポケットティッシュ3つ、ガムが一つに、何種類かのあめ玉の入った袋、はっか飴、履歴書、タオルにハンカチ…………使えないモノが幾つか
「ま、あるだけマシか」
あめ玉を口に放り込んで、立ち上がる。
人里はどこにあるだろう。それよりも、この森が安全とは限らないだろうから、慎重に行かなくてはいけない。木々の間を周囲を警戒しながら歩いて行く。
「異世界に来たら、チートで無双じゃヒヤッハーって展開が多いけど、現実的に考えてそんなご都合展開はないよな」
人里に行ったら、なんとか手に職つけて働かなければならない。何、少し前まで向こうでも同じことをやっていたし、こっちならもっと楽かもしれない。
森を無事に抜けられると決まったわけではないが、ポジティブに行かないと心が折れそうだ。いきなりファンタジー異世界に落とされて、さぁ冒険だなどと思えるほど楽観的ではない。が、今はとにかく、ポジティブにいこう。
「町についたら、先ずは服だな、セオリー通りならこの服はかなり高く売れるハズ」
ファンタジー異世界なら、向こうほどは技術は進んでいないだろうと予想する。しかし、俺と同じ地球人が来ていて、技術を広めているならそうはいかないかもしれないが、その時はその時。行き当たりばったりで行くしかない。
暫く歩いていると、がさがさと草が揺れる音がし始めた。側にある木に張り付いて、耳をそばだてて周囲を探る。勿論、木の上も警戒する。ジャガーっぽい生き物もいるかもしれないからな。
さて、何がいるのかな~と思ったら、草むらからボロボロの衣服に、薄緑色の体表、尖った耳をした子供が出てきた。
いや、子供じゃない。あれはおそらくゴブリンだ。
「本当にファンタジー異世界なんだな」
よくいる雑魚モンスターが出て来て、少し興奮する。しかし、雑魚モンスターとはいっても丸腰の俺じゃ勝てないし………というか、ゴブリンがこの世界で雑魚とはまだ決まってないよな。
どうやら、此方には気付いていないようで、辺りをキョロキョロしている。このまま、此方に気づかずにどっか行ってくれないかな?
じっと見ていると、後ろから音が━━━
「………」
「………」
後ろを振り向いたら、別のゴブリンと目が合いました。
「oh……」
思わず英語っぽくなってしまった。じっと見つめ合………いや、睨み合う? というか、惚けていたら………
「ゲギャギャ!?」
「グギャ!?」
俺を見ていたゴブリンが叫んで、それに気づいたもう一方のゴブリンも叫び声を上げた。
ヤバい!
流石に2体同時だと逃げ切れるか分からない。さて、どうするか………
今までで一番頭が回転してるのを感じながら、この窮地を脱する方法を考える。
「ゲギャ!」
「ギャウ!」
とか考えていたら、ゴブリンは二匹とも逃げていった。何故に? しかし、危機から脱出出来たことに違いはない。とりあえず、仲間を引き連れて戻って来るかもしれないので、この場からそそくさと離れる。
それにしても、なんで逃げたんだあいつら? 以外と警戒心が強いとか? 普段から人とは戦わないとか? ま、考えても仕方ないし早くここから離れよう。
「にしても、モンスターが普通にいるということは、この森は危険ということだな」
やっぱりさっさとこんな森からは脱出しよう。急ぎ足で進んでいく。そういえば、どっちに町があるんだろう? 急に不安になってきた。が、とにかく先に進むしかない。
不安と焦りを感じながら走っていく。しかし、やはり現実とは上手くいかないものらしく………
「グルルルルルル」
「うせやろ」
続いて俺の前に現れたのは、先ほどのゴブリンが本当に雑魚に思えてしまうほどの存在感をしているモンスター。馬ほどの大きさをした白い狼だ。
ゴブリン回避したと思ったら、それの数百倍強そうなバケモノ出てくるとか、反則だろおい!
「はぁ、ここまでか」
こんなバケモノから逃げるなんて不可能なハズだ。
諦めの境地に至った俺は、死ぬときは痛くないといいなぁ、と思っていた。
しかし━━━
「華麗なる僕の剣技ッ! “輝光瞬斬”!」
光輝く一閃が、強大なバケモノの首を易々と斬り飛ばした。そのあり得ない光景に、唖然としてしまう。それにしても、一体全体何者なんだ?
「やぁ、大丈夫かい?」
「あ、あぁ、助かった」
「フッ。礼には及ばないよ、人助けによって、この僕の輝きがさらに増したからねッ!」
なんだろう。助けてくれた相手にこんなこと思うのはあれだけど………
「あぁ! 今日も輝いてしまった! やはり僕のこの煌めきは抑えられないようだねッ!」
クソうぜぇ
主人公の名前は次回出ます