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第62話 本当の姿

ユウはふと、笑顔を消した。


「あのさ……さっきから気になっているんだけど、僕と話す時、毎回機密かどうか気にしなくて良いよ」


確かに先刻から話の都度、毎回ゴードンは自分に言って良い情報かという質問を繰り返している。それがユウには気になっていた。


その台詞を聞いたゴードンは、変な顔をした。

今しがたテレパシー訓練にかこつけて、機密をバラしたばかりの奴が何を言っているんだ……。



ユウはゴードンの表面意識を詠み取ったようで、気付いた表情をした後……ちょっと舌を出して悪戯っ子のように笑った。ユウもそんな顔をするのかと、ゴードンは驚いて……なんだか少し、嬉しくなった。


「ユウがいつも無口なのは、言えない事が多過ぎるからだと思っていた」

「間違ってないよ……。今はゴードンひとりきりだから、安心して話している。大勢の前だと色んな尾ひれがつくから、下手な事は言えないんだ」


寂しそうな表情をするユウ……言いたい事も言えない。

だけど今は話している。それだけゴードンを信用している……それがひしひしと伝わって来て、ゴードンは凄く嬉しくなった。ユウもまた、ゴードンを”親友”として認めているのだ。


人の噂は恐ろしいものだ。

止めようとしても留まる所を知らない。……そしていつの間にか、もっと大きくなっている。それが悪いものであれば、ある程……。


噂……といえば、ユウにまつわる有名な噂がある。


「そういえば、お前の噂さ……ほら、千人規模の軍地基地を一撃壊滅したってやつ。英雄譚になっているけど……あれ、本当にお前ひとりでやったの?」


何気なく聞いたゴードンの質問は、ユウにとっては触れて欲しくない過去だったらしい……急に暗い顔を見せた。ゴードンから視線を外して、俯き気味に答える。


「……うん……」


静まり返った。

重い空気に、聞いてはいけない事だったと気付き、ゴードンは話題を変える。



ふと、ユウのネックレスに目がいった。

細くしなやかなネックレス……普段は襟のある精鋭部隊の制服を着ているので見えない。だが今はゴードンからの借り物の服を着ていて、首元が顕わになっているから気が付いた。


能力制御装置、試作機。

……ユウは以前に何度か、基本能力値の異常高上昇で倒れた事がある。あまり酷いと、死んでしまう事もあると聞いている。


「それさ……ネックレス……機械だっけ。そんな風に見えないけど……どうやって動くの?」

「……これ?」


ユウは、つまんで見せた。

くるっと絡めて、人差し指で弄ぶようにしながら答える。


「さぁ……自動発動じゃない? 基本能力値が急激に跳ね上がった時だけ起動するって聞いているけど……動いてるところ、見た事がないよ」


「お前が倒れる時って、急に意識失うから……お前が見る事、ないんじゃない?」

「……そうなのかな?」


ゴードンは何度も遭遇している……ユウが倒れるところに。酷く顔色が悪く……そう、真っ白に……蒼白になって意識を失うのだ……突然に。


ゴードンは不安に思っている事を口にした。


「お前……本当は昨日、壁の中での作業中に、その発作起こして倒れたんじゃないのか? お前、覚えてないだけだろ……」

「夢中になって、やり過ぎただけだよ」


ユウは笑って、すぐに否定をした。

配線に、そこまで夢中になるものだろうか……。


嘘をついている様子はなかった。

それでも、心配は残る……いくら何でも……。その不安は、ユウの笑顔では払拭されない。

もしもゴードンの不安が的中していたとしても、倒れる時のユウに自覚はなく、気が付いてもいないようなので確認のしようがなかった。


そう考えたら、急にユウの顔色が悪いような気がしてきた。


「……少し休めよ。昨日、緊急搬送されたばっかりだろ」

「大丈夫だよ」


いつも見せないような、人懐こい笑顔をゴードンに向ける。

多少ヤケクソになっているとはいえ、この時間を楽しんでいるようにも見えた。


正直、勿体ないと感じた……こんなユウは、初めてだ。これが本当の姿なのかもしれない。

それでも…………。


「良いから寝ろって。日中からグータラ出来る機会なんて、お前滅多にないんだから」

「大丈夫だって」


変に頑固だ……。

ゴードンは実力行使に出た。横になろうとしないユウを、無理矢理、押し倒してベッドの中に押し込めた。布団を掛けて、顔だけしか出ていない状態にする。


ひといき、浅く息を吐いて……借り物の精鋭部隊の制服を着たゴードンは偉そうなポーズを取って、恰好をつけて言った。


「精鋭部隊の俺様の言う事は聞きな、一般人のユウ!」


…………。


異常なまでに恥ずかしくなった。

真っ赤になって汗をだらだら掻くゴードンを見て、ユウは微笑む。


「判った。……おやすみ」


目を閉じると、すぐにユウは眠りに入った。

実はずっと無理して起きていたのでは……と思う程に。


ゴードンは先程やったと同じように、ユウのベッドの傍に座って、顔を近付けて眠るユウを眺めた。

やはり、いつもより顔色が悪い……気のせいじゃない。


何故、こんなに無理ばかりするのだろう……いや、させたのは自分か……。

もっと早くにベッドへ押し込めるべきだった。



ゴードンはダイニングテーブルの椅子へ向かい、背もたれを逆に前にして抱え込むように座って、今度は少し離れた位置でユウを見る。


目を閉じて……テレパシーの練習。


もしも、もっと上手なら……もっと深くまで詠めたなら……。

この……いつも何も言わない、ユウの本当の気持ちも判るだろうか。

すぐに気が付いて、無理をさせないように……出来るだろうか。


精鋭部隊の制服は、そこまでの奇跡を与えてはくれなかったが……。








今回、5話構成と書きましたが増えて、7話構成になりました。

あと2話このエピソードは続きます。

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