第6話 期待の新人
「俺はゴードン。ユウ、お前みたいなコネで精鋭部隊へ入ったような奴、ギッタンギッタンにしてやるぜ!」
――何か、勘違いをしているようだ。
しかし自信満々で、正義の味方のような顔をしている。
ユウは無言で”果たし状”と書かれた封書を開け、中を読んだ。
「……本気の勝負?」
「そうだ! 掛け値なし、100パーセントの力で勝負だ!」
目の前の、ゴードンをじーっと見て
「……能力戦?」
「そうだ!!」
ゴードンは自信たっぷりである。
非戦闘員である子供達は、話に聞くだけで、実際の戦闘は見た事がない。
勿論、先日の地下施設、襲撃時……
真上の地上で行われたユウの破壊行動も、見てはいない。
見ていたら、こんな事が言える筈もないのだ。
「…………」
「どうした! 怖気づいたか!」
食事の固形物を口に入れながら、ユウは上目遣いで言った。
「……能力戦は、やめよ?」
「なんで」
ゴードンは不服そうだ。
「ここに書いてある場所は、一般レクリエーション室だろ? 能力戦なんてやったら壊しちゃうよ」
「ああ……そうか」
ゴードンは、能力に自信がありそうだった。
「じゃあ、肉弾戦だな!」
「まぁ……それなら……」
モゴモゴと食べながら、歯切れ悪そうにユウは返事をした。
「よし、時間は書いてある通り、昼だ! 首洗って待ってろ!」
指をさし、ポーズを取って、ゴードンは颯爽と去って行った。
「…………」
ユウはゴードンの後姿を見ながら、もう一度、果たし状を読む。
静かに事の成り行きを見守っていた子供達が、急に騒ぎ出した。
レイカも心配そうな顔をする。
「ちょっと~ユウ、大丈夫なの?」
「なにが」
「ゴードン君って、今期待の新人だって噂なのよ! 体力も、群を抜いていてダントツ。能力も発現していて、実動部隊の教官が、目を付けているって!」
「ゴードンさん、体力130もあるんですよ。俺ら平均70なのに……すげぇ!」
ユウは無言で後ろのポケットから端末を取り出し、操作を始めた。
「……なにしてんの?」
レイカが覗き込むと『受け付けました』という画面だけが見えた。
「回復部隊を依頼しておいた」
子供達が、おお~と沸き立つ。
次代の期待の新人ゴードンと、”英雄”ユウの勝負。
これは凄いものが見られると、期待に胸を躍らせた。
「ユウから、回復部隊の依頼が出ていますが?」
端末を操作していた親衛隊の女性が気が付いて、報告をする。
各自端末を見ると、確かに依頼はユウからで、既に承認済み。
しかも場所は、一般レクリエーション室。
「何してんの? アイツ……」
噂は、瞬く間に広がった。
ユウと、ゴードンの一騎打ち。
本気の肉弾戦、勝負。
”英雄”と謳われてるだけあって、ユウ関係の噂は広まるのが早い。
「……はぁ!?」
驚いたのは、精鋭部隊だ。
常時、目の前でユウの破壊行動を見ている上、今朝もリーダーとの勝負を見学したばかりだ。
「本気で勝負とか……殺されるぞ!」
全員、蒼褪めたが、既に時間だ。