第3話 襲撃
ユウ達が暮らす、この建物は地下にある。
基本は先人達の残した遺物を利用して暮らしているので、大抵は地上の建造物が多いが、ここは珍しく地下施設だ。
戦いが能力戦主体になってからは、地上への出入りは主に瞬間移動なので、地下と地上を結ぶ出入り口は特にない。
地下施設の真上は、見渡す限り何もない荒野で、見晴らしが良過ぎる位だ。
この地下施設は、限りなく何度も襲撃を受けていた。
点在する建物に比べれば地下にある分、安全で資材もそれなりにあり、食料・リサイクル・教育・娯楽室完備と居心地も良い。
しかし幾度にも渡る執拗な襲撃は、果たして本当に、それだけの理由なのだろうか。
食堂では、今日も子供達が賑やかだ。
「あっ、ユウさまだ~、ユウさま~!」
ユウが幼馴染の女の子、レイカと一緒に食堂へ入る。
レイカはユウより少し年上で、ユウが八歳、レイカが十二歳。
レイカは子供達と仲良さそうに、中心へ座る。
ユウも勧められるまま、レイカの隣に座った。
年も大して変わらないのに、憧れの精鋭部隊に所属しているユウを目の前にして、子供達が目を輝かせる。
うっとり見惚れる者、まだ見ぬ外の世界を聞く者、様々だ。
ユウは、固形物の食事をモソモソと摂りながら
「外の世界は機密扱いだから、言えない」
と、ぶっきら棒に答えた。
ユウを中心に沸くのを、不満そうに見る大人達がいる。
”反ユウ派”とでも、言うのだろうか。
「……けっ、なにが”英雄”だ。ただの化け物じゃねぇか」
ユウが、次期リーダーとまで噂されているのが、また気に入らないらしい。
当のユウは、”英雄”だの”次期リーダー”だのと言われているのには興味がなく、むしろ煩わしく思っていた。
特に”英雄”には、触れて欲しくなさそうだった。
食べ終わるとユウは無言で立ち上がり、食器を片付けてさっさと出て行ってしまった。
どこか、不機嫌そうに。
「ユウさま、いつもあまり喋らないねぇ~」
「……前は、あんなじゃなかったんだけどなぁ」
子供達の言葉に、レイカが答える。
以前はもっと、笑ったり泣いたりしていたんだけど……と。
「いつからあんなに、なっちゃったんだっけかなぁ……」
リーダー執務室では、例の如く会議が開かれていた。
先日のリダクションデバイスの件だ。
任務は完遂したものの、ユウと同行した大人二人だけではなく、複数の犠牲者を出した。
その詳細報告と、残りの装置破壊について。
話し合いというより、リーダーの指示を仰いでいる。
「では、その様に。あと、ユウの件ですが……」
座って話しているだけに飽きたのか、リーダーは食堂へ向かった。
親衛隊も、後を追う。
「少し、休ませてやれませんか? ここの所、連続です。ユウはまだ、子供ですし」
「あいつが居ると居ないとじゃ、全然違うんだよ!」
確かにユウが参戦してからは、犠牲者も減っている。
戦闘も比較的、楽に安定して来ている。
ユウが子供ながら精鋭部隊に所属している理由は、多数の能力を持ち、高い殲滅力に他ならない。
「それは……判っていますが……」
――突然、けたたましく警報が鳴り響いた。
『敵襲、敵襲。第一級戦闘態勢。繰り返す、敵襲、第一級戦闘態勢』
「なんだって!?」
リーダーは近くのモニターで、管制室と連絡を取る。
「防衛班はどうした!?」
「襲われています。能力部隊の力が半減されていて、苦戦中。物理部隊だけでは、もちません!」
リーダーは顔を歪め、舌打ちをする。
――リダクションデバイスだ。先手を取られた。
「戦闘部隊を出せ。第一、第二、すべてだ。リダクションデバイスの位置は判るか?」
「判りません!」
「……なに?」
「リーダー、少し変です」
親衛隊の女性が、異変を訴えた。
「探査部隊が常に周囲を監視しているのに、敵影に気が付かないなんて、変です」
「それは、リダクションデバイスのせいで……」
親衛隊の男性が補足しようとするが、やはり女性は納得いかない。
「ここは地下ですよ。地上で装置を稼働しても、影響は地上と空中のみです」
女性の言葉に、ハッとなる。
「つまり……裏切り者がいて、この地下からも装置を稼働している……!」
リーダーの表情が見た事もない程、険しくなった。
盛り盛り、盛り盛り。
いっぱい載せてみました。