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第23話 制裁

「ユウ専用の制御装置っていうのを、作っているんだって!」


 翌日、ハジメに会いに行くと、開口一番レイカが話し始めた。

 ユウは、ぎょっとする。


「レイカ!!」


 ――いくら何でも、まずい。

 まだ試作も出来ていない……リーダー直々のプロジェクトと言っても、過言ではない。

 わざわざトップシークレットと銘打ってはいないが、明らかに同レベルだ。


 顔色を変え、慌てているユウを見て、ゴードンは事の重要性に気が付いた。

 だが、既に遅い。

 しかもレイカは、何も気付いてはいない。


「だってハジメさんは、ユウのお兄さんでしょ? 昨日も心配していたじゃない」


 レイカにしてみれば、弟の身体を心配する兄・ハジメに、吉報を持って来たつもりだったのだろう。


 ――内容は、関係がない。

 リーダーからの命令は、”能力を使って得た情報の、漏洩禁止”だ。


 だがレイカは何も理解していなかった。

 リーダーの命令に、背く意味を……。

 命令違反は、即刻、処刑か追放だ。


 ユウは、こぶしを握りしめた。

 辛そうに……歯を喰いしばるユウを見て、ハジメは言った。


「大丈夫だよ、誰にも言わないさ。……ねぇ? ユウ。もう少し、信じてくれよ……俺を」


 ――違う、そうじゃない。

 漏洩先の兄を、信じるとか、信じないとかいう問題じゃない。


 ユウは、レイカと共に、呼び出しを受けた。

 制裁だ……。





 執務室には、リーダーと親衛隊が待っていた。

 緊張した空気が、漂う。


「レイカ。俺が命令した事を、思い出して言ってみろ」


 ようやくレイカにも、自分が行った事の重要性が判って来たようだった。

 レイカは小刻みに震えながら、リーダーを見上げて、小さな声を出す。


「の……能力で得た、情報は……漏洩、禁止……。だ、誰にも、言うな……」


「お前がした事は?」

「…………」


 もう恐怖で、声が出なかった。


 いつもユウにちょっかいを出してくる時のリーダーとは程遠い、圧し潰されそうな圧迫感。

 レイカを見下すリーダーの眼を、直視することは出来なかった。


 ……怖くて、怖くて……泣きたい。

 でも、泣く事も出来ない程の、恐怖……。


 レイカは無意識に、すぐ横にいるユウへ……震える手を伸ばしていた。


 レイカが、親指と人差し指で、ユウの袖をつまんだ。

 今のレイカには、これが精一杯だった。


「僕にも、責任はあります」


 レイカが死を意識する威圧感の中、ユウは袖をつままれた腕で、レイカを下げるようにして言った。

 ゴードンから見ても、レイカをかばっている。


 リーダーとユウは、無言で目を合わせたまま、お互い引かない。

 レイカは緊張に耐え切れず、目を伏せた。


「チッ……」


 引いたのは、リーダーだった。

 舌打ちをして、片手で髪をかき上げながら、後ろを向いて椅子にドカッと座った。

 そして、いつものように足を机へ乗せて、溜息をつく。


「……レイカ。お前は当分、自室謹慎、隔離処分だ。反省しろ。ゴードン、お前は実動部隊を志望だったな。命令は、厳守出来るか?」


 突然、自分に会話を振られて、慌ててゴードンは直立する。


「はっ、はい!!」

「なら、隔離中のレイカの相手は、ゴードン、お前とユウのみ許可をする。当然、この件は他言禁止だ」


「はいっ!!!」


 声が裏返りそうな程、ゴードンは緊張していた。

 リーダーにしては甘い処遇に、ユウは驚きながら、礼を言う。


「……ありがとう」


 ユウに連れられ、レイカとゴードンが退出する。

 三人の後姿を追っていた親衛隊が振り向くと、リーダーは不愉快をあらわにしていた。


「チッ……ユウの奴、本気で歯向かいやがって……」


 そして厳しい瞳をして、言った。


「同行を許可したのは俺だ。一度だけ、許してやる。二度目はない」







そして次回はついに、このエピソードのクライマックス!

今迄で最大文字数でお送りします。

お楽しみに!(してくれると良いなぁ)

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