第23話 制裁
「ユウ専用の制御装置っていうのを、作っているんだって!」
翌日、ハジメに会いに行くと、開口一番レイカが話し始めた。
ユウは、ぎょっとする。
「レイカ!!」
――いくら何でも、まずい。
まだ試作も出来ていない……リーダー直々のプロジェクトと言っても、過言ではない。
わざわざトップシークレットと銘打ってはいないが、明らかに同レベルだ。
顔色を変え、慌てているユウを見て、ゴードンは事の重要性に気が付いた。
だが、既に遅い。
しかもレイカは、何も気付いてはいない。
「だってハジメさんは、ユウのお兄さんでしょ? 昨日も心配していたじゃない」
レイカにしてみれば、弟の身体を心配する兄・ハジメに、吉報を持って来たつもりだったのだろう。
――内容は、関係がない。
リーダーからの命令は、”能力を使って得た情報の、漏洩禁止”だ。
だがレイカは何も理解していなかった。
リーダーの命令に、背く意味を……。
命令違反は、即刻、処刑か追放だ。
ユウは、拳を握りしめた。
辛そうに……歯を喰いしばるユウを見て、ハジメは言った。
「大丈夫だよ、誰にも言わないさ。……ねぇ? ユウ。もう少し、信じてくれよ……俺を」
――違う、そうじゃない。
漏洩先の兄を、信じるとか、信じないとかいう問題じゃない。
ユウは、レイカと共に、呼び出しを受けた。
制裁だ……。
◆
執務室には、リーダーと親衛隊が待っていた。
緊張した空気が、漂う。
「レイカ。俺が命令した事を、思い出して言ってみろ」
ようやくレイカにも、自分が行った事の重要性が判って来たようだった。
レイカは小刻みに震えながら、リーダーを見上げて、小さな声を出す。
「の……能力で得た、情報は……漏洩、禁止……。だ、誰にも、言うな……」
「お前がした事は?」
「…………」
もう恐怖で、声が出なかった。
いつもユウにちょっかいを出してくる時のリーダーとは程遠い、圧し潰されそうな圧迫感。
レイカを見下すリーダーの眼を、直視することは出来なかった。
……怖くて、怖くて……泣きたい。
でも、泣く事も出来ない程の、恐怖……。
レイカは無意識に、すぐ横にいるユウへ……震える手を伸ばしていた。
レイカが、親指と人差し指で、ユウの袖をつまんだ。
今のレイカには、これが精一杯だった。
「僕にも、責任はあります」
レイカが死を意識する威圧感の中、ユウは袖をつままれた腕で、レイカを下げるようにして言った。
ゴードンから見ても、レイカを庇っている。
リーダーとユウは、無言で目を合わせたまま、お互い引かない。
レイカは緊張に耐え切れず、目を伏せた。
「チッ……」
引いたのは、リーダーだった。
舌打ちをして、片手で髪をかき上げながら、後ろを向いて椅子にドカッと座った。
そして、いつものように足を机へ乗せて、溜息をつく。
「……レイカ。お前は当分、自室謹慎、隔離処分だ。反省しろ。ゴードン、お前は実動部隊を志望だったな。命令は、厳守出来るか?」
突然、自分に会話を振られて、慌ててゴードンは直立する。
「はっ、はい!!」
「なら、隔離中のレイカの相手は、ゴードン、お前とユウのみ許可をする。当然、この件は他言禁止だ」
「はいっ!!!」
声が裏返りそうな程、ゴードンは緊張していた。
リーダーにしては甘い処遇に、ユウは驚きながら、礼を言う。
「……ありがとう」
ユウに連れられ、レイカとゴードンが退出する。
三人の後姿を追っていた親衛隊が振り向くと、リーダーは不愉快を露わにしていた。
「チッ……ユウの奴、本気で歯向かいやがって……」
そして厳しい瞳をして、言った。
「同行を許可したのは俺だ。一度だけ、許してやる。二度目はない」
そして次回はついに、このエピソードのクライマックス!
今迄で最大文字数でお送りします。
お楽しみに!(してくれると良いなぁ)




