第21話 開発図面
リーダーは机の上に書籍を複数広げ、書面に向かって何かを熱心に書いていた。
執務室に入って来た親衛隊二人は、稀有な光景を見て、後ずさる。
「……なんだよ?」
何か、見てはいけないものを見てしまったような気がした。
「ね……熱でも、あるんですか?」
「俺が書類に向かっているのが、そんなにオカシイかよ!」
リーダーは舌打ちをして、作業に戻る。
妙に熱心だ。
どうやら図面らしく、開発部へ送った。
「……聞いても、良いですか?」
先程、怒られたので、慎重に。
リーダーは書籍をもう一度見ながら、答えた。
「ユウ用の、制御装置プロトタイプだよ」
「え……」
「リダクションデバイスが、あっただろ? あれは知識があれば、割と簡単に作れる。能力に作用させるという意味では、制御システムも大して変わらない。
だがユウ用となると、能力値がバカみたいに高い分、色々必要になるんだよ」
……リーダーが、研究者並に賢く見えた。
親衛隊二人の言いたい事を察したのか、リーダーはしかめっ面をする。
「お前ら、俺をバカにしているだろ!」
「い、いえ……とんでもない! しかし、その……、新規開発が出来る程とは、想定外でした」
リーダーはいつものように椅子へ踏ん反り返り、足を机に投げ出して言った。
「……ユウは、倒れたのは二回目みたいな事を言っていたが、一回目の記録は残っていない。アイツ……自分で覚えていないだけで、きっと何度か倒れているぞ」
親衛隊は、リーダーの洞察力に驚く。
医務室の医療従事者も、そんな事は言ってなかったのに……。
「悪い予感が当たる前に、手を打とうって事さ」
――能力値が、異常に高上昇するのが危険なら
制御装置を作って、抑えてやれば良い――
理屈は簡単で、理論的にも可能だ。
設計図面も、既に出来上がった。
……問題は、資材だ。
リーダーが言ったように、基本能力値が人の何倍もあるユウに作用させるには――
特殊技法を駆使して、特別製を作るしかない。
だが、その元となる資材や鉱石は、希少でなかなか手に入らない。
研究設備が整った、この地下施設でさえも……
在庫があったか、怪しいものだ。
「……そろそろ、考える頃合い……か」
すぐ傍にいる親衛隊にすら、聞こえるか聞こえないか判らない程の小声で……リーダーは冷めた眼をして、独り言を呟いた。




