第20話 レイカ能力発現
ユウが自分の部屋へ戻ると、レイカとゴードンが待ち受けていた。
「ユウ、良かったね! お兄さん、生きていて!」
開口一番、レイカが言った。
――ユウは、怪訝な顔をする。
「……どうして、知っているの?」
ハジメの存在は、まだ極秘事項だ。
発見当時の状況といい、記憶の欠如……そして、よりによって”ユウの兄”。
懸念材料しかない。
まだ地下施設の新入りとして、迎える訳にはいかなかった。
するとレイカが椅子から立ち上がり、自信満々に胸を張って人差し指を立てて言った。
「ふっふっふ~、なんと! 私も!! ついに能力が、発現しました!」
「……なんの能力?」
「ふっふっふ~、聞いて驚くな~!」
前置きが長い。
「ユウがどこにいても、ユウの声が聞こえる能力!」
――驚いた。
そんな能力、聞いた事がない。
何故、そんな個人に断定的なんだろう。
「なんか、この前からオカシイと思っていたのよね。ユウの声が聞こえるような……ぼそぼそっと」
「いつから?」
「数日前からかな~。ずっと聞き取れなかったんだけど、さっきユウが倒れた後から、はっきり聞こえるようになった」
レイカは、人差し指と中指でブイサインを出した。
そして顔を赤らめ、両手で頬を抑えて……うっとりとした表情をする。
「愛、かしら?」
「ぼ……僕の声、だけ?」
「そう! ユウの声だけ!」
「テレパシーとかじゃないの?」
「喋っている声だけ!」
「…………」
何て変な能力だ。
いや、それよりも”精鋭部隊”であるユウには、一般のレイカには知られてはいけない情報も沢山ある。
既に知られているが、兄の事も、現状トップシークレット扱いだ。
自信満々に自慢しているレイカと、レイカから兄の情報を聞いたゴードンを、ユウはリーダー執務室へ連行するしかなかった。
「…………」
頭を抱えたのは、リーダーだ。
「なに、その、能力…………」
「愛です!!」
頬を染めて、自信満々に答えるレイカ。
困った顔をして、親衛隊の男性が言った。
「……最近ユウ、よく喋るようになったと思っていたんですが……」
以前のユウなら無口だったので、問題はなかったかも知れないが。
「とりあえず……」
軽いショックから立ち直るようにして、リーダーは命令をした。
「レイカ、その能力は使用禁止」
「ええっ、制御なんて出来ないですよぉ!!」
リーダーは舌打ちをして、苦い顔を見せる。
「……なら、その能力で得た情報は、漏洩禁止。誰にも言うな。能力自体も、他言無用だ」
「えええええ~!」
「判っていると思うが、命令違反は厳罰。追放もしくは死罪だ。そこのクソガキ、お前もだ」
「……え? え、……俺??」
ゴードンは完全に、とばっちりだった。




