第2話 リダクションデバイス
「リダクションデバイス?」
地下施設、総責任者リーダーの部屋兼執務室では、会議が行われていた。
リーダー、親衛隊の男性一人と女性一人、管制室主任が同席をする。
近年の戦闘は、主に”能力戦”だ。
世界が汚染され、人は生き残る為に、自らの身体を変化させた。
その過程で生まれたのが、いわゆる”超能力”と呼ばれる特殊能力を持った新人類。
――ミュータントだ。
最近ではその数も増え、この集団でも特殊能力を持った人材が多く起用されている。
その戦闘の要となる”超能力”は、テクノロジーで解析が可能だ。
ReductionDeviceとは、端末を複数個設置する事で、その内側にいる者の能力をある程度、任意に阻害する事が出来る装置があるという。
能力が低ければ、裸同様、無力状態となる。
勝ち目はない。
「チッ……面倒臭い物を……。どこが持っている?」
リーダーが舌打ちをしながら不機嫌そうに尋ねると、正面にある画面へ地図が表示された。
「ここと……ここの、二箇所ですね」
「すぐ破壊しに行くぞ。”精鋭部隊”へ、出撃命令を出せ」
建物内に、警報が鳴り響く。
『出撃命令。精鋭部隊、至急準備してください。繰り返す、出撃命令。精鋭部隊、至急準備してください』
実動部隊用のトレーニング室で、一人汗を流していたユウが、それを聞いて怪訝な顔をした。
「……また?」
急いで、先程の何もない広いだけの部屋へ行くと、既に全員集まっていた。
「遅いぞ!」
リーダーに恫喝されるが、ユウは一言謝り、集団の中へ入る。
簡易的な作戦が伝えられた。
簡単だ。
探査能力のある者と組んで、リダクションデバイスの破壊、及び製作者の殺害、妨害者の排除。
『精鋭部隊、出撃します』
アナウンスと同時に、広い部屋から人の姿が消えた。
瞬間移動で、”外”へ出る。
そして、そこからまた瞬間移動を幾度か繰り返して、目的地へ到達する。
最近の戦闘スタイルは、大抵これだ。
――敵の建物内へ、入る。
柱が沢山ある縦長の建物で、階数があるが、人が住むには適さない。
既に察知されていて、敵も戦闘態勢だ。
多数の柱のせいで、視界が悪い。
リーダーが合図をすると、作戦通りに散開した。
ユウは、大人二人と共に、敵の殲滅に当たる。
「……三人」
探査能力のあるユウは、同行者二人へ、この階にいる敵の数を知らせる。
二人は頷いて、散開した。
――敵がいる事は、判っている。
勿論相手も、こちらの存在に気付いているだろう。
能力戦は基本、先手必勝だ。
視界が悪い中、用心して歩を進める。
「……?」
探査能力があるのだから……
人数も判っているのだから、場所も判って当然なのに、何故か判別がつかない。
「……!」
リダクションデバイス稼働中である事に気が付いた時、上から大きな網が覆い被さった。
網の四方には錘があり、ユウは床へ釘付けになる。
「くっ……!」
動けない。
網自体に、リダクションデバイスが作用し、能力を阻害していた。
すると三人の敵が、姿を現した。
一人は女で、露出の高い服を着ている。
「あら~凄いわ、この子! まだ生きてる! 普通なら、その網にかかった時点で肉塊よ?」
「他の二人は、既にその肉塊だ。残念だったな」
ユウは網に捕らわれ、床に這いつくばりながら、敵を睨んだ。
「おい! コイツあの”小さな悪魔”じゃないのか!?」
三人は、ぎょっとする。
こんな戦場に子供がいる事自体が、おかしい。
「チャンスだ……。殺っちまおうぜ」
――同行者は、死んだ。
助けに来る者はいない。
元より戦場では、自分の命は自分でしか守れない。
ユウは能力を発揮し、自分を捕らえていた網を三人に向かって投げつけた。
網自体が能力を阻害し高い殺傷能力があるというのに、それを跳ね返すなど……
信じ難い光景を見て三人が驚いている中、網は、三人の身体を分断して行った。
暫く息を切らしていたユウは、その場へ跪く。
作戦を、ほぼ遂行した精鋭部隊の仲間――リーダー親衛隊の男性が生存者確認に見回っていると、蹲っているユウをみつけた。
近くまで来ると、ユウは顔を上げずに……震える小さな声を出す。
「……こんな酷い殺し方を、するつもりはなかったんだ……」
親衛隊の男性の近くには、無残な屍骸が転がっていた。
男性は無言でユウを抱いて、慰めた。
という夢を正月明けに見たので、少し脚色してストーリーにしてみました!