表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/89

第14話 友達

 ゴードンのクリア件数が急激に伸びた。

 必須カリキュラムも、もうすぐ終了だ。

 同時に、能力値と体力数値も、大幅に上がっている。


 もう”期待の新人”どころじゃない。

 楽しみで仕方がない、と教育担当の教官達が話していた。


 食堂に来ていたリーダーと親衛隊が、それを小耳に挟んだ。


「なんか、ユウに助言して貰っているみたいですよ」

「ゴードンって、あのガキか……ユウに殺されかけた」


 山積みされた食料を掻っ込むように、口へ収めていくリーダー。

 あっという間に平らげた。

 本当に噛んで、食べているのだろうか。


 ユウとレイカがやって来た。

 素通りしようとするユウを、リーダーはひっ捕まえて、自分の位置まで力尽くで引き戻す。


「……なに?」


 ユウは凄く不機嫌そうだ。


「お前、友達出来たの? ほら、お前が殺し損ねたゴードンって奴」


 聞き方が最悪だ……と、横で聞いていた親衛隊は苦笑した。

 ユウは掴まれたリーダーの手を払い除けながら


「ゴードンは友達じゃないよ」


 と言った。


 食堂に入って来たばかりのゴードンは、しっかり聞いてしまった。

 ユウの「友達じゃない」発言を。


 最近、毎日一緒にいて、指導して貰っていたというのに。

 てっきりレイカ以外、友達がいないユウの、初めての同年代の友達になったと思っていたのに。


「う、う、う……うわぁあああ~~~ん!!」


 豪快に泣いて、ゴードンは飛び出して行った。


「……まずかったんじゃないですか?」


 親衛隊の男性が、困った表情で呟いた。

 ユウの頭をぽん、と叩き、呆れた表情をしながらあごでリーダーは命令をした。


「追ってやれ」




 ゴードンはショックだった。

 実は、少し嬉しかったのだ。


 ユウの助言でメキメキちからをつけていく自分にも、憧れの”精鋭部隊”のユウの横にいる自分にも

 ちょっとした優越感を持っていたのは、確かだ。


『ゴードンは友達じゃないよ』


 ユウの言葉が頭の中でリフレインする。


「うううう~~……」


 再び泣けて来た。


「……大丈夫?」


 目の前に、ゴードンを覗き込むユウがいた。

 さっきまで、いなかったのに。


 慌てふためいていると、ユウはあっけらかんとして言った。


「瞬間移動で追って来た」


 ゴードンは更に驚く。


「お……お……お前……、施設内は能力禁止だぞ!!」

「精鋭部隊は良いんだよ。緊急時も多いから」


 なんだかもう、泣く気力がなくなってきた。

 ゴードンは不貞腐れた態度で、背中を向ける。


「ふんっ……。どうせ俺は、お前の友達じゃないんだろ」

「うん」


 くぅううっ、即答かよ!

 ゴードンは再び、涙が出て来た。


「……ゴードンが言ったんだよ?」

「え?」


 振り向くと、ユウが微笑んで言った。


「お前なんか友達じゃない、ライバルだ! って。……違うの?」


 ……そうだ、確かに言った。

 初めての勝負に負けた時、苦し紛れに……。


 本気にしたのか。

 ……いや、本当に俺で良いのか?


 こんなに差があるのに

 本当に、ライバルが俺で……良いのか?


「うん」


 ユウは笑顔で答えた。


 いや、ちょっと待てよ?

  今、声にしたか? 俺……。


「表面意識は()めるんだよ」


 え?


「リーダーみたいに深くまでは無理だけど、精鋭部隊は大体テレパシー出来るよ?」


 え……。


「えええええ~!!」


 あんまりゴードンが驚くので、ユウまで吃驚してしまった。


「だって、そうじゃなかったら、どうやって敵地で連絡取るのさ……」

「言われてみればそうだけど、勝手に()むなよ!!」


 ゴードンが現状出来るのは、空中浮遊などの念動力系だけだ。

 精神感応力テレパシーまで必要となると、一気に憧れの精鋭部隊への壁が高くなったような気がした。



「ゴードンは、どうして精鋭部隊に憧れているの?」



 廊下で二人並んで座って、喋り出す。

 訓練室じゃない、珍しく普通に。


「どうしてって……誰でも憧れるだろ。強いし、カッコイイし」

「カッコイイ……?」


「リーダーとかさ、憧れるじゃん!」

「さっき食堂にいたよ?」


「畏れ多くて、近付けないって!」

「畏れ多い……?」


 いつも、ちょっかいを出してくるわ、対戦すればボコボコにされるまでやるわ、なにが ”畏れ多い”のか、ユウには判らなかった。


 両脚のひざを抱えて小さくなって、ユウは言った。


「精鋭部隊なんて、そんな良いものじゃないよ。全員帰ってくる事の方が、珍しいし」


「……怖いのか?」

「怖いよ……」


 ゴードンには、伝わったかどうかは判らない。


 戦地へ赴くのが怖いか

 戦うのが怖いか

 死ぬのが怖いか


 ……殺すのが、怖いか。


 ”外”へ出た事もないゴードンには、何ひとつ理解出来る筈もなかった。


 警報が鳴り響く。


『出撃命令。精鋭部隊、至急準備してください。繰り返す。出撃命令。精鋭部隊、至急準備してください』


 ユウは、スッと立ち上がり


「行くね」


 一言だけ告げた。


「ユウ!」


 ゴードンはニパッと笑って、右腕を突き出し、親指を立てて恰好をつけて言った。


「最近はな、”親友”って書いて、ライバルって読むんだぞ! 覚えておけ!」

「……うん」


 ユウは微笑んでから、瞬間移動で消えていった。







今回はゴードンの一人称が入っています。

もう、どっちが主人公なんだか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、感想、評価、など。是非、皆様の声をお聞かせ下さい。
レビューを頂いたら、天にも昇るほど嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ