第14話 友達
ゴードンのクリア件数が急激に伸びた。
必須カリキュラムも、もうすぐ終了だ。
同時に、能力値と体力数値も、大幅に上がっている。
もう”期待の新人”どころじゃない。
楽しみで仕方がない、と教育担当の教官達が話していた。
食堂に来ていたリーダーと親衛隊が、それを小耳に挟んだ。
「なんか、ユウに助言して貰っているみたいですよ」
「ゴードンって、あのガキか……ユウに殺されかけた」
山積みされた食料を掻っ込むように、口へ収めていくリーダー。
あっという間に平らげた。
本当に噛んで、食べているのだろうか。
ユウとレイカがやって来た。
素通りしようとするユウを、リーダーはひっ捕まえて、自分の位置まで力尽くで引き戻す。
「……なに?」
ユウは凄く不機嫌そうだ。
「お前、友達出来たの? ほら、お前が殺し損ねたゴードンって奴」
聞き方が最悪だ……と、横で聞いていた親衛隊は苦笑した。
ユウは掴まれたリーダーの手を払い除けながら
「ゴードンは友達じゃないよ」
と言った。
食堂に入って来たばかりのゴードンは、しっかり聞いてしまった。
ユウの「友達じゃない」発言を。
最近、毎日一緒にいて、指導して貰っていたというのに。
てっきりレイカ以外、友達がいないユウの、初めての同年代の友達になったと思っていたのに。
「う、う、う……うわぁあああ~~~ん!!」
豪快に泣いて、ゴードンは飛び出して行った。
「……まずかったんじゃないですか?」
親衛隊の男性が、困った表情で呟いた。
ユウの頭をぽん、と叩き、呆れた表情をしながら顎でリーダーは命令をした。
「追ってやれ」
ゴードンはショックだった。
実は、少し嬉しかったのだ。
ユウの助言でメキメキちからをつけていく自分にも、憧れの”精鋭部隊”のユウの横にいる自分にも
ちょっとした優越感を持っていたのは、確かだ。
『ゴードンは友達じゃないよ』
ユウの言葉が頭の中でリフレインする。
「うううう~~……」
再び泣けて来た。
「……大丈夫?」
目の前に、ゴードンを覗き込むユウがいた。
さっきまで、いなかったのに。
慌てふためいていると、ユウはあっけらかんとして言った。
「瞬間移動で追って来た」
ゴードンは更に驚く。
「お……お……お前……、施設内は能力禁止だぞ!!」
「精鋭部隊は良いんだよ。緊急時も多いから」
なんだかもう、泣く気力がなくなってきた。
ゴードンは不貞腐れた態度で、背中を向ける。
「ふんっ……。どうせ俺は、お前の友達じゃないんだろ」
「うん」
くぅううっ、即答かよ!
ゴードンは再び、涙が出て来た。
「……ゴードンが言ったんだよ?」
「え?」
振り向くと、ユウが微笑んで言った。
「お前なんか友達じゃない、ライバルだ! って。……違うの?」
……そうだ、確かに言った。
初めての勝負に負けた時、苦し紛れに……。
本気にしたのか。
……いや、本当に俺で良いのか?
こんなに差があるのに
本当に、ライバルが俺で……良いのか?
「うん」
ユウは笑顔で答えた。
いや、ちょっと待てよ?
今、声にしたか? 俺……。
「表面意識は詠めるんだよ」
え?
「リーダーみたいに深くまでは無理だけど、精鋭部隊は大体テレパシー出来るよ?」
え……。
「えええええ~!!」
あんまりゴードンが驚くので、ユウまで吃驚してしまった。
「だって、そうじゃなかったら、どうやって敵地で連絡取るのさ……」
「言われてみればそうだけど、勝手に詠むなよ!!」
ゴードンが現状出来るのは、空中浮遊などの念動力系だけだ。
精神感応力まで必要となると、一気に憧れの精鋭部隊への壁が高くなったような気がした。
「ゴードンは、どうして精鋭部隊に憧れているの?」
廊下で二人並んで座って、喋り出す。
訓練室じゃない、珍しく普通に。
「どうしてって……誰でも憧れるだろ。強いし、カッコイイし」
「カッコイイ……?」
「リーダーとかさ、憧れるじゃん!」
「さっき食堂にいたよ?」
「畏れ多くて、近付けないって!」
「畏れ多い……?」
いつも、ちょっかいを出してくるわ、対戦すればボコボコにされるまでやるわ、なにが ”畏れ多い”のか、ユウには判らなかった。
両脚の膝を抱えて小さくなって、ユウは言った。
「精鋭部隊なんて、そんな良いものじゃないよ。全員帰ってくる事の方が、珍しいし」
「……怖いのか?」
「怖いよ……」
ゴードンには、伝わったかどうかは判らない。
戦地へ赴くのが怖いか
戦うのが怖いか
死ぬのが怖いか
……殺すのが、怖いか。
”外”へ出た事もないゴードンには、何ひとつ理解出来る筈もなかった。
警報が鳴り響く。
『出撃命令。精鋭部隊、至急準備してください。繰り返す。出撃命令。精鋭部隊、至急準備してください』
ユウは、スッと立ち上がり
「行くね」
一言だけ告げた。
「ユウ!」
ゴードンはニパッと笑って、右腕を突き出し、親指を立てて恰好をつけて言った。
「最近はな、”親友”って書いて、ライバルって読むんだぞ! 覚えておけ!」
「……うん」
ユウは微笑んでから、瞬間移動で消えていった。
今回はゴードンの一人称が入っています。
もう、どっちが主人公なんだか。




