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第13話 助言

 ……時は戻っていく。

 ユウがゴードンと対戦をした、あの時間へ。



 この地下施設には、教育、訓練用の専用室がある。

 先の話に出た、ユウ達”実動部隊”が模擬戦などにも使う「トレーニング室」


 そしてもう一つ、一般用として「訓練室」がある。

 一般用は実動部隊用と比べ、部屋は一回り小さく、受けられる教育内容も基礎から中級程度だ。


 その訓練室で、ゴードンは日々訓練に明け暮れていた。

 ユウに負けたあの日から、ずっと。


 色々勘違いをしていたとはいえ、同年代。

 やれば出来る筈だ。必ず追いついてやる! と意気込んだものの、ゴードンは行き詰っていた。


 どうしてもクリア出来ない課題が山積みになっていく。

 もはや何から手をつけたら良いのか、判らなくなってきた。


「ふう……」


 朝からずっと訓練を続けていて、流石に疲れた。

 ゴードンは座り込んで、ひと休みにする。


 汗を拭いて、水分補給。


 どうしたものか……と、教育プログラムを点けっぱなしにしていると、ランキングが流れて来た。

 今迄すぐに再度スタートや、別プログラムを選んでいたので、こんなものがあるとは、気が付いていなかった。


「へー、どれどれ……」


 好奇心のつもりだった。


 しかし流れて来たのは、上から下まで全部、同じ名前。

 そう、ユウだ。

 しかもどれも同じような点数が、ついている。


 ゴードンは呆気に取られた。


「あ、あいつ……何やってんだ……」


 普通、ひとつのプログラムはクリア出来れば良いので、そう何度も繰り返さない。

 しかし五十位まであるこのランキングは、全てユウの名前で埋め尽くされていた。


 クリアどころか、最高得点を維持しながら、少なくても五十回以上繰り返した証拠だ。


 ゴードンが今行っているこのプログラムは、能力コントロールカリキュラムの一環だ。

 ユウが頻繁に行っているものの、ひとつだった。


 高い電子音と共に、ランキングが更新された。

 一番上に、現時刻でユウの名前が表示される。


「! 今、やっているのか!」


 いきなりライバル心が燃え出し、やる気MAXで立ち上がって、ゴードンは再びプログラムに挑戦した。


 しかし、やはりクリアすら出来ない。

 悔しくて、堪らなくなった。



 ゴードンは、シャワーを浴びて着替えてから食堂へ行くと、いつも通り子供達の輪の中に、レイカと共にユウがいた。

 ユウはいつも通り、何を考えているか判らない顔をして、モソモソと固形物の食事を摂っている。


 少し離れた位置で、じっとユウを見ていたゴードン。

 目が合った。


「…………」


 バン! と机を叩いて勢い良くゴードンは立ち上がり、ユウの方へ歩いて行った。

 目の前まで来ると、口をへの字にしてフルフルと震えている。


「来い!!」


 食事中のユウをさらうようにして、連れて行ってしまった。



「頼む! 攻略法を教えてくれ!」


 人がいない廊下で、頭を下げてユウに頼み込むゴードンの姿があった。


 ライバルと決めた奴に頭を下げるのは苦痛だったが、課題をクリア出来なければ、ライバルもへったくれもない。

 ユウは少し考えて、「いいよ」と答えた。



 すぐに二人は一般用の訓練室へ向かった。

 ユウはゴードンの求めに応じて一度見せて貰い、助言をしてから再び試行するも、やはり詰まる。

 ゴードンの試行履歴を見せて貰うと、未達成が見事に並んでいた。


「最初から、ひとつずつ片付けていこうか」


 既に達成済みの、初期の初期から行おうと言うユウに不満を感じたが、頭を下げてまで頼んだ手前、我慢してプログラムを消化していく。

 気付くと『クリア』の文字が出ていた。


「……あれ?」

「もう一回やる? 次やる?」


 ここまで結構な時間がかかっていたのに、ユウは笑顔で付き合ってくれていた。


「も……もう一回」


 ……そうだ……。

 このプログラムは何回やってもクリア出来なかった筈だ。


 それが、何故だろう?

 今はこれがクリア出来なかった事が、不思議なほど簡単だった。


「次、いくよ」


 ユウは大した事はしていない。

 ほんのちょっと、助言しているだけだ。


 たった一言二言なのに、ゴードンは今まで未達成だったものを、次々とクリアしていった。


「ふぅうう~……」


 さっきまで、詰まって詰まって、どうしようもなくなっていたものが、すべてクリアした。

 流石に疲れて、休憩を取る。

 ユウがタオルと水を、差し出してくれた。


 ランキングが流れて来る。

 やっぱり上から下まで、ユウの名前ばっかりだ。


「なぁ……。ちょっと、やってみてくれよ」

「やだ」


 即答。


「……なんで?」


 無言で水を飲んでいるユウ。


「なにか不正でもしているのか? 見せたくないとか……」

「してないよ」

「じゃあ良いだろ! これだけランキング出るとか、異常だぜ」


「今は君の助言に来ている。もう必要ないなら帰るよ。……いつ出撃命令が出るか、判らないし」


 ゴードンは思い出す。

 こうして横に並んで話していて、うっかり忘れていたが、ユウは”精鋭部隊”だ。


 ここの所、頻繁に出撃命令が出ている。

 アナウンスが流れるから、一般人でも知っている。

 こうして自由にしていられる時間は、実は貴重なのだ。


 ユウが着ているのは、憧れの”精鋭部隊”の制服。


「……悪い、調子に乗った。まだ時間、取れるか? もうちょっとアドバイス頼みたい」


 真面目な顔で向き合ったゴードンに、ユウは笑顔で応えた。







そう、ゴードンって、ぽっと出キャラじゃないんですよ~!

今回はちょっと多めの2000文字超え。

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