七公主の誕生日。
朝になった。
今日は嫡妃のもとに挨拶に行く日だった。
しかし、昨晩、あまり眠れなかった婉容は仮病を使って眠ることにした。
嫡妃のもとには婉容を除く側妃たちが集まっている。嫡妃はゲホゲホと咳混じりに話を始めた。
「ごきげんよう。六側妃は病気で休んでいるの。みなも体調に気をつけてね…」
嫡妃の顔色は悪い。その悪い顔色の上に白粉を塗っているものだから、余計に顔色が悪く見えた。
三側妃は内心で嫡妃は長くはないな、っと呟いた。
五側妃が言った。
「嫡妃さま、お顔が真っ青ですわ」
「大丈夫よ。それより、もう時期で七公主の誕生日よ」
七公主は三王の同母妹だ。
その七公主の誕生日は毎回、三王の屋敷で行われていた。皇宮からは静妃もやって来る。
四側妃が二側妃に耳打ちをした。
「七公主の誕生日なんてだるいわ」
「そうね。早く嫁げば良いのに」
七公主は男勝りで剣を振り回すお転婆だ。そんな彼女を嫁にしようという男は現れなかった。
17歳になっても嫁の貰い手がない七公主はいきおくれと陰口を叩かれている。
四公主も二公主も早くに嫁いでいたから余計であった。
嫡妃は口元をハンカチでおさえる。
「七公主の誕生日には皇族もやって来るから粗相のないようにしましょう」
嫡妃のことばに皆は揃って返事をした。
嫡妃への挨拶を欠席した婉容は髪も結わずに寝台でごろごろしていた。
七公主の誕生日なんて忘れている。
というより、自分は参加しなくてもいいと思っていた。