三側妃さま。
二品夫人は娘のためにコネを何度も使った。三王の生母、静妃の足元にひれ伏して泣き出して、「側妃さまを助けてください」っと常套句をかますのである。
気の弱い静妃は泣き出す二品夫人を宥めるように「わかったわ、わかったわ。お願いだから泣かないでちょうだい」っと言っては、挨拶にくる三王に三側妃の棟で休むように言いつけるのである。
そうなると三王は義務のように三側妃のもとにいっては彼女を抱きしめた。
「最近は四側妃のもとや、二側妃のもとにも行っていないのよ?ましてや、六側妃は可哀想…忘れられているの」
「六側妃…ああ、婉容さまですね!」
「あの子も持参金目当ての側妃。忘れられているのは可哀想だけど悔しくはないわ!私はあの子よりも美しい自信があるのですから!」
三側妃はそれほど美しくない。
容姿は中の下である。駱駝のように細い顔に垂れ下がった鼻はお世辞にも美しいとは言えなかった。
一方の婉容は猫目にキリッとした眉、高い鼻梁とエキゾチックな顔つきで誰しもが振り向く美人であった。
悪口は後宮ではお菓子を食べるように簡単に言えた。言わなければ言わないで我慢していることもできたが、甘い誘惑に勝てないように悪口を吐き出す誘惑には勝てないのである。
「お母様、今夜は殿下は来てくださいますか?」
「それは殿下次第です。でも、人の心は操れます。必ず、来てくださいますわ」
そう言って二品夫人は立ち上がり、礼をして部屋を後にした。三側妃は二品夫人の言葉を胸にしまい夜を待つことにした。