二品夫人のコネ。
婉容が昼寝をしている時間、三側妃の母親、二品夫人が遊びにやって来た。
ふくよかな体格の二品夫人は出迎えた三側妃を見るとにこやかに微笑んで辞儀をした。
「お母様、ようこそいらっしゃいました!」
「側妃さま、御機嫌麗しく」
「お待ちしておりましたわ」
二人は部屋に入った。そして長椅子に腰を下ろした。
「側妃さま、殿下はいらっしゃいましたか?」
「それが…」
三側妃は俯いた。
「また、侍女や下女に手を出していらっしゃるの!?」
「今度は奶娘の姪、蘭怡です!五側妃や六側妃のもとならまだ、我慢できます!今回はあまりにもあからさま過ぎて…」
三側妃は嗚咽混じりに言った。二品夫人は娘の背中を摩ってやるしか出来なかった。
三王には六人の側妃と八人の侍妾がいた。
六人の側妃はみな持参金目当てで娶った女たちで八人の侍妾は三王の多情の犠牲者である。
九人目の侍妾候補である蘭怡は多情で愛されているわけではなかった。
明らかに三王の愛情を一身に受けていた。
手を繋いで庭を散歩したり、妻や夫と呼びあっている姿は他の側妃や侍妾たちには虫唾がはしるほど気味が悪かった。
「お母様、なんとかならない?」
「そういうと思って男子を五人産んだ女の下着と懐妊薬を持ってまいりました」
「男子さえ産めば、殿下の心をつなぎ止められる…でも、お母様。どうやったら殿下は来てくださいますか?」
「衣服に花の香りをたき込めたり、楽器を習ったりしたら良いのでは?あとはお母様に任せなさい」
「ありがとう!」
三側妃は二品夫人に抱きついた。
二品夫人には強いコネがあった。彼女の姉が三王の母親なのである。
従姉妹すらも貧乏故に娶らなければならなかった三王を一時は誰もが同情したが、持参金を借金返済にあてたことが露見し、同情は消え去った。