持参金目当てはバレてます。
婉容を側妃にしたのは三王が貧しかったからだ。
部屋住み三男坊で妃嬪の息子はあまり皇帝に可愛いがられなかった。
そこで三王は持参金目当てで婉容を側妃にしたのである。名家の娘を娶り、少しだけはくがついた三王に皇帝は目をかけるようになった。
おかげで三王の屋敷は潤いはじめたのだった。
婉容はそれを知っていた。金の切れ目が縁の切れ目というのも知っている。
「貞、お姉さまの屋敷にでも行こうかしら」
「雨ですから、お体が冷えます」
「わかったわ」
「四側妃さまを呼んでお喋りはどうです?」
四側妃とは四番目の側妃のことである。この四側妃も持参金目当てで三王が連れてきた女だった。
「四側妃を見ていると笑っちゃう!」
婉容の突拍子のないことばに貞は目を丸くした。
「だって潰れた月餅みたいな顔をみていると笑いたくなくても笑っちゃうわ!だめよ!四側妃は!」
「なら、二側妃さまは?」
「いやよ、二側妃は陰気だから」
「なら、五側妃さまは?」
「五側妃ね。確か、文媛と言ったわね…あまり話したことはないんだけど…めんどくさいわ。昼寝をするわ…あー出家したい」
そう言い放つと婉容は机に顔を突っ伏して瞳を閉じた。