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物欲と私。
皇帝陛下は底知れぬ物欲を持っていた。
淑妃に似た女に関しては特に激しく反応した。
それを明修は知らない。
明修は言った。
「陛下、廃妃にされた嫁など忘れてください」
「忘れたくても…」
皇帝陛下はぐっと言葉を我慢した。
「私めはお勤めがございます…失礼します」
明修は皇帝陛下に手を合わせると自身の庵に帰っていった。
三王はどう言葉をかけて良いのか分からず、ただ拳を握ったまま黙っていた。
持参金目当てで側妃にしたはずの女が今では懐かしく、遠い。
三王は実に都合が良い男だった。
そのあと皇帝陛下と三王は蘭怡の安産祈願をして帰っていった。
皇宮に戻った皇帝陛下は書斎に篭ってしまった。
心配した林昭儀は楊仁を呼びつけた。