引きこもりなんです。
明修は庵から出ることは少なかった。
元嫡妃であるが、付き人も付けずに身の回りの全てを自分でした。
髪がないから髪を結うことも、化粧をすることもない。
だから、付き人なんていらなかった。
若い尼が明修の庵に粗末な食事を運んできた。
「尼君、お食事です。今日は三王殿下がいらっしゃいますよ」
「今更、会えるわけないわ…」
明修は若い尼から食事を受け取ると庵に篭ってしまった。
この姿が彼女を慎ましく、そして寂しげに見せていた。
三王に会いたくないのは単に今までのことがあるからだ。好みでなかった元夫にわざわざ会う理由など今の彼女にはない。
明修は食事をすぐに済ませると仏像に向かって手を合わせた。
寺の正門には三王と皇帝陛下が到着した。
車から降りた皇帝陛下はひれ伏す尼から誰かを探すようにジロジロと見つめた。
三王はその姿にまさかと思った。
皇帝陛下は住職に尋ねた。
「明修の尼君はいないのか?」
「尼君はあまり外に出ず、庵に篭って読経をしております」
「父上、明修が気になるのですか」
「いや、不便をしていないか気になっただけだ」
そう言い放つと皇帝陛下は寺の門を潜った。
静寂と木魚の音、線香の煙が漂う。
皇帝陛下は心を落ち着けるどころかそわそわしている。