嵌められた。嬉しい。
福禧公主は四月の頭に西域に嫁いでいった。
彼女の嫁入り道具や衣装は蘭怡が用意した。
それを見ていた二側妃は段々と蘭怡にへつらうようになった。
それに蘭怡は婉容への挨拶も遅れてくることが当たり前になっていた。
二側妃は四側妃に可哀想な嫡妃さまと言っていた。
それが聞こえていても婉容は聞かないふりをした。
婉容は貞を連れて長い廊下を歩いていた。
目の前からお腹を擦りながら蘭怡が歩いてきた。
すれ違うかどうかという時に蘭怡が婉容を引き止めた。
「嫡妃さま、まだ屋敷にいらしたのね」
「いて悪いのかしら?」
「一つも嫡妃らしいことをしていない方が嫡妃だなんて。なんなら変わりましょうか?」
「変われるならなってご覧なさい」
そう言って婉容は歩いていった。
婉容は中庭にある梅園まで来ると入り口に貞を待たせて中へと入っていった。
白梅、紅梅、そして心地の良い梅の香りがする。
婉容は梅のひと枝を手折り、香りをかいだ。
「梅がお好きですか?」
飄々とした声だった。
声の方に振り向くと左賢王が立っていた。
「左賢王…なぜ?」
「あなたが手紙をくれたのでしょう?」
「手紙?」
婉容が首をかしげた時だ。
四側妃が三王を連れて現れた。