皇帝陛下の本心。
三王と蘭怡は皇帝陛下に仲良く挨拶に行った。
その様子は嫡妃のようで、人々は蘭怡を嫡妃だと勘違いした。
皇宮にやって来た二人は後宮にいた皇帝陛下に挨拶をした。
「三王、どうして嫡妃を連れてこぬ」
「蘭怡が側妃になりましたので父上にご挨拶を、と思いまして」
「そうか。確か、懐妊しているのだったな。しかし、嫡妃も大切にしないといけない…ならば、わしが嫡妃を貰ってやっても構わん」
皇帝陛下は笑った。
三王はそれが冗談に聞こえなかった。
正直、婉容の実家から毎月の生活費を援助してもらっている。
その婉容を手放すということは生活費が無くなることを意味していた。
何としてでも婉容を手放すことはできなかった。
それは文媛も同じだった。
だから、嫡妃を選ぶときに婉容か文媛か悩んだのである。
しかし、クジで決めればある意味で公平で言い訳ができた。
「それより、三王」
「何でしょう」
「左賢王が妻を娶りたいと言ってきたそうだな」
皇帝陛下は椅子から身を乗り出した。
「しかし、元懿王妃の喪があります」
「陛下、殿下」
蘭怡が珊瑚色の唇を動かした。
「王妃の喪も大事ですが、民が求めているのは慶事ですわ。七公主をお使いなされば良いので?」
「側妃よ、なぜ七公主なのだ?」
「これは私めの勘ですが、左賢王と七公主なら上手くいくと思うのです。私めと殿下のように」
「そうか…考えよう。七公主も嫁がないとならぬからな」
蘭怡は頭を下げて礼をした。
頭を下げながらニヤリとした。
邪魔な七公主を追い出す口実ができたからである。
蘭怡の意見が通ったのか分からなかったが、七公主は左賢王に嫁ぐことになった。
嫁ぐにあたり、七公主は福禧公主の封号を与えられた。