蘭怡を側妃に。
「嫡妃さま、ご機嫌麗しゅう」
「五側妃、ごきげんよう」
婉容は五側妃に席を用意して座らせた。
「嫡妃はどうですか?」
「側妃のころと変わらないわ…殿下は九姨娘のもと…」
「実は九姨娘、蘭怡は懐妊しています」
五側妃の言葉に婉容は動揺することはなかった。自分も元懿王妃と同じように懐妊せずに死ぬ運命だと思っていたからだ。
「構わないわ…別に…私は出家したいのよ」
「出家!?」
「いつも、憂鬱で辛い。側妃であっても嫡妃であってもね…」
「私たちは持参金目当てで側妃になったものね」
五側妃は言葉遣いを変えた。別に婉容は気にしなかった。
むしろ、その方が良かった。
「分かる。私が嫁いだ時は妓楼のつけを払うためよ。五側妃は?」
「私の時は食費」
二人はお互いの顔を見つめると声を出して笑った。
人付き合いが面倒と感じていた婉容だったが、五側妃こと文媛には好意を感じた。
同じ境遇ということを吐き出せたのが大きかった。
「五側妃…いえ、文媛と言ったわね。文媛、この際、蘭怡を側妃にしようと思うの」
「蘭怡を?」
「お腹の子が男児であれ女児であれ、殿下の初めての子どもよ。生母にはそれなりの身分を与えないとね」
「なるほど。確かに殿下にとっては初めての子どもですものね。生母が姨娘だと蔑まれるわ」
王の男児は世継ぎであれば世子と呼ばれた。
女児は郡主と呼ばれる。
世子以外の男児は國公の身分を与えられた。
「それが嫡妃として出来ることよ…あとは出家に向けて頑張るわ!」
「嫡妃さま、それはちょっと…」
翌日、婉容の命で九姨娘・蘭怡は六側妃に任命された。
すると蘭怡はますます寵愛をされた。