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後宮よりも出家したい。
毎日が憂鬱。
屋敷の外を濡らす雨は朝から降り出して、一向に止む気配はなかった。
格子から越しから婉容は外を眺めた。
綻びはじめた梅の花から滴る雨粒が艶めかしい。これを誰かと見つめていたら、きっと言葉にしているだろう。
しかし、この広い屋敷の自分の棟には人気はない。
夫の東平王、通称、三王は婉容を忘れていた。
最近、奶娘の姪、蘭怡を可愛がっているのだ。
婉容は側妃である。寵愛にしか縋ることしかできない女は三王のことを待つしかできなかった。
侍女の貞が茶を運んできた。
それと同時に侍女頭がやって来た。
「側妃さま、今夜は殿下はお越しになりませんのでお休み下さい」
気まずそうに侍女頭は言った。
「毎日、そうだわ。このまま殿下がお越しにならなければ寺に入りたいわ」
「かようなこと…」
侍女頭は目線を落とす。貞は黙っていた。
「殿下が訪れたのは先月だけ。あとはみんな張蘭怡の元よ…側妃として愛されないのは側妃ではないわ」
そう婉容が言うと侍女頭は頭を下げて部屋を後にした。