たのしいPWこうざ
小さな水晶を買ったら、中に水が入っていました。黒い粒みたいな鉱物も一緒に閉じ込められてて、砂時計みたいにゆっくり動きます。
「ヒロミさん、それパールじゃないんですか?」
「まあ、主成分はほぼ同じなんだけどね。んーと、それのバージョンアップ版というか。スエキチ君は、PWについてどの位知識があるのかな?」
「ん〜、元々こいつも預かり物で、必要最低限の世話出来るくらいならあるんですけど…」
「じゃあ、口で伝えるだけじゃ難しいかな。これ見てくれる?」
そう言うと、腕に着けていたリストパソコンをプロジェクターモードにして、壁に何か映した。
『5分でわかる!PWのあれやこれ!!』
…は?
〜その1・PWってなんだろう!〜
「ジャジャン!!」
えっ。口で効果音!?
『PWは、お水みたいだけどちゃんと生きています。君達の遠い親戚みたいなものです。仲良くしましょうね!』
「こいつ本当に生き物なんですか?正直、水槽が本体かなと。それに、親戚はちょっと…」
「冷たいなー。ちゃんとした生物だよ。とは言っても、かなりミックスされてるんだけどね。」
「?」
「例えばPWが発光するのは、クラゲとか海蛍が光るのと同じような仕組なんだよ。発光物質や、刺激を受けて伝える組織をちょっと拝借してるの。」
「クラゲですか…でも、こいつら飼うのに、海水使いませんよ?」
「それは次のページね。焦らない焦らない。」
〜その2・PWはなにをたべるの?〜
「ダカダン!!」
何それ!?
『PWにあげる餌と言えばパールですが、中身はミネラルやプランクトン、アミノ酸等が入っています。他にも、自分で光合成したり、たまにあげるお水と栄養剤で健康を保っています。これでいつもピッチピチ!!』
「雑食性ていうか…これが何の関係があるんですか?」
「PWはね、簡単に言えば色々な子が共生してるの。海出身もいれば、池や川から来たのとか。で、一緒に住むためにはお家が必要でしょ?それを作るのが、水と必要最低限のミネラル分。古代の、まだハッキリとした境目のない水の世界に近いんだよ。」
「…ああ、ガキの頃似たような養殖所に社会見学に行ったような。」
「そうそう、元の発想はそれと同じ。勿論、もうちょい複雑だけどね。」
「何となくは、わかってきました。納得とは別物だけど。」
「意外に頑固だね〜。じゃ、次!」
〜その3・PWはそだつの?〜
「…」
……え、無いの!?ちょっと待っちゃったよ!?
『PWは、話しかけたり音楽を聴かせたりして刺激を与えると、発光の反応が早くなったり綺麗になったりします。しかし、基本能力は変わりません。でも、光り方や怒り方はPWそれぞれ。ふれあいで個性を伸ばしてあげましょう☆』
「まあこの通り、普通は基本の発光や、お腹空いた時のプンプンプクプクはたいして変わらないの。『普通のまま』で育てたらね。」
「それって、さっきの『オヤツ』と関係あります?」
「ピンポーン!ここからがいい所ですよ〜」
〜とくべつへん・PWかいぞうけいかく〜
『PWは生き物。それも、無限の可能性を秘めています。つまり、これからのパールや栄養剤等アイテムの研究・開発によっては、芸を覚えてくれたり、愛情表現豊かになってくれるかもしれません。明るい未来にレッツトライ!!』
「で、私がトライした結果が、このオヤツこと『Pパール』です!」
「えぇえ!?イヤイヤイヤ、省略し過ぎでしょ!!Pって、パワーのPですか?」
「ううん違う。ピンクのP。綺麗だし、カワイイ色でしょ♪」
「えー、あー、いや、(賢いのかズレてんのか…)はぁ。」
「これは元々、ある所で実験のお手伝いしてた時に退屈しのぎに作ったんだよ。PWの神経回路で、信号の伝達とかもっと早く出来ないかなーと思って。色々やってたら出来ちゃったんだけど、まだあんまり試して無かったんだよね。その研究所のにあげたら、ブックブクになっちゃってさ。怒られる前に逃げて来ちゃった。まぁ、そこがなーんか怪しくて嫌になってたのもあったし。」
「それ、世間一般では大事件とか一大事と言うのでは。」
「やっぱそうなのかなあ?それから、何かつけられたりしてる気がして。家は危ないと思って、シェルターで移動しながら逃げてたんだ。で、そこにスエキチ君が来たんで迎撃した、と。」
「あー…それであの手厚い歓迎。」
「まあ、大体こんな感じ。でも、このPWの反応にはちょっと驚いた。」
「え?いや、勝手にあげといて無責任な。」
「いやね、私の想定だと今までの発光が強くなったり、音への反応速度が上がったりするのと同時に多少揺れるかな?位だったの。研究所のは、あんまり良い環境じゃなかったから別として。この子、スエキチ君の声だけにちゃんと応えてるの。試しに呼ぶね。ミーちゃん?」
…ユラユラ光るだけだ。いつもより綺麗だけど。
「スエキチ君、呼んでみて。」
「はあ。おーい、水ー。」
コプッ。プクン!
「…!!」
「ね?この子、スエキチ君の声だけ聞き分けてるの。音声を個別に認識出来るなんて、考えもしなかった。」
「え…でも、なんで俺?」
「そうだねー、PWが反応しやすい周波数とか色々あるのかもしれないけど。ま、単純になついてるんじゃない?モテるね〜♪」
「いや、別になつかれてもなあ。」
「おーい二人共、朝飯買って来たぞ〜!!ヒロミさん、好きなもん取ってくださいよー。あ、スエキチ、その茶俺のな。マリンちゃんも、おにぎりでも食うか〜?」
ボコンッ!!!
「わ、どしたんだよこれ。腹減ったのか?」
あー、どうやらこいつは嫌われたらしい。いやあ、いい子だ。威張るようなもんでも無いが、妙な優越感があった。
ヒロミさんも、苦笑いしながらサンドイッチを頬張っていた。