祟り
…ゴボゴボゴボ…
「…」
…ゴボッ。ゴボゴボゴボ…ブシュッ。
「……」
遠い実家での法事から戻り、旅疲れの重い体と荷物を引きずりながら開けた部屋のドア。出迎えてくれたのは、可愛い彼女…(髪はさらさらのロング希望)ではなく、鈍く赤い警戒色に光る水。水槽から溢れんばかりに、マグマの如く躍り上がっている。
祟りじゃ。水神様の祟りじゃ!!恐ろしや恐ろしや…
「あれ〜?スエキチもう帰ってきたのかよ。土産は何ー?」
呆然としている背後から浴びせられた脳天気な声に、俺の目にも警戒色がともった。
「チューキチてめぇ…」
「ちゃんと水に餌やっといてくれって言っただろ!!!?」
時は西暦20XX年。度重なる動物を介した伝染病や動物虐待、環境ホルモン等による突然変異等々にブチ切れた政府は、一部を除く「ペット飼育禁止令」を出した。
一部と言っても、一般人が飼うには厳しい審査、徹底した管理と月一回の現状報告、更に数百万の登録料を求められるため、物好きな金持ち以外ほぼ不可能に近い。
そんな中、政府と企業が共同開発したという大発明、その名も
「ペットウォーター(以下PW)」
が発表された。
普通の動物と違い、登録料も審査も不要。とはいえ、餌やりや日光浴等それなりの世話が必要で、世話をすると発光や発色でちゃんと反応する。ペット好きのストレス軽減の為の打開策といった所だろうか。
しかし、発売されると予想以上の好反応で、最近では散歩用のミニボトルや、美少女型ボトルフィギュア(どうしたいんだ?)も出ている。
あ、
「スエキチ」ってのは俺のあだ名で、本名は
「末吉 勝」。まあ、見ての通り単純な由来です。
「チューキチ」というのは、俺のルームメイトで天敵です。
本名
「里中 吉道」…何が中吉だ。絶対凶だ。大凶だ。
こんな名前の二人が相部屋になったもんで、大学寮では
「おみくじコンビ」と勝手に呼ばれてます。迷惑千万!!
夢に見たのは、水が怒っているのを呆然と眺めるというシーンです。かなり前に見たのですが、今でも鮮明に覚えています。