表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第1話 死にたがり

明るく楽しい朝の学校。

夏休みの思い出作りにと、

荒岸ユリと御坂ミカは森へキャンプに行く計画を立てる。


暗く冷たい夜の森。

重い苦しみから逃れようと、

死を望むある者は森の小屋へと向かう。


歪んだ魂のサイクル。非日常が日常になりゆく。

四つの世界の全住人のうち二人だけの”選ばれし者”だけが

命の歯車を正す事ができる。



学校コメディと異界ホラーの融合。


光と闇が交錯する......。

~登場人物紹介~


~神北中学校の面々/光~


荒岸ユリ

主人公。厨二病な中学2年生。2年8組のやる気なさそうな風紀委員。

だいたいハイテンション!だが、冷静さも備えている。

”普通”では気が済まない性格のため、クラスではかなり異彩を放つ。

セミロングの黒髪。


御坂ミカ

ユリのクラスメート。優しく真面目だがちょっとズレている。ツッコミが早い。

休み時間や放課後にはユリと図書館にこもる。主に神話や伝説の本を読む。

焦げ茶色のポニーテールに赤いメガネ。


山田トシキ

ユリら2年8組の担任。まだ若いらしく、優柔不断な面も。そこが”可愛い”と一部の女子の間で人気。


~異界の住人たち/闇~


魔王

地獄の統率者。悪のイメージが強いが、悪い人間に災いをもたらし、地上の秩序を保っている。

罪を背負った魂を償いへと導き、善き心を手に入れた者に再び肉体を与える。

生前は最強と言われた戦士で、巨大な赤い魔剣を使う。元々地獄を支配していた天界の皇帝に

その実力を認められ、魔王として君臨した。


プリザイツ

罪を背負った魂達が、地獄での厳しい償いに反乱を起こして結束した軍。

地獄を抜け出して地上で怨念を放ち、人間に乗り移る等して怨みを晴らしている。

最終目的は地上と天界を侵略し、世界を再構築する事だという。


死神/リーパー

黒のローブを纏い、白銀に輝く大鎌を持つ煉獄の住人。

後悔や罪のある魂が地上に留まり悪となる前に、地獄か天界に送り届ける者。

地上に濃く漂う怨念により精神を病み、死を望む善き人々の魂を集めて

プリザイツへの対抗軍をつくるつもりらしい。


堕天使の魂

天界にて神に逆らい、堕落した天使。普通の魂よりも強い力を持ち、人間に憑けば

取り返しのつかない事になりかねない。憑かずに人をコントロールする魔法を使う事もある。

死神の大鎌をも回避し、永遠に生きようとする。



~プロローグ~


 あらゆる者に魂が宿っている。


肉体が去りし時、善き魂は天界へと昇り、悪しき魂は地獄へと堕ちる。


後悔や怨みを抱く者達は地上に留まり続ける。


地獄では罪を背負いし魂達が償いに励む。


しかし過酷な償いに怒りをたぎらせた魂達は、地獄を抜け出すべく反乱を起こす。


この反乱軍は”プリザイツ”と呼ばれる。


魔王はこれを抑えようとするも、あまりの勢力になす術を失ってしまう。


彼らは地上に上って来ると、怨念を放ち人々の精神を病ませていく。


ある程度の力を持つ魂は人間に乗り移り、怨みと怒りを晴らす。


また、怨念の影響を受けやすい子供達の中には、人柄が変わりいじめに走る者もいる。


生ける人間にはそうしたスピリチュアルな存在が見えない。


そのため対処法がなく、次々と自殺者が出てきている。


死神は、白銀に輝く大鎌を手にした。


地上に溢れ返った罪多き魂の緒を切り、消滅させるため...!!




~第1話 死にたがり~



 真夜中の2時を回る頃。私はとある森の奥で、古い小屋の窓を覗いていた。

辺りは闇で、光と言えば木々の間からとても淡い月明かりが差し込むだけだった。

なので中はよく見えない。2つのぼんやりした影が確認できるのみだ。

「.................て」

蚊のなくような微かな声で、中の影は言った。

何と言ったか分からないが......女の声、だろうか?

「早く!!」

私は、思わずひっくり返るところだった。

強い怒りに満ちた、恐ろしい声。

とても怖いけれど、気になって目が離せない。

「早く殺しなさいよ!」

殺せ!?この女性は一体何をしているのか?

森の中に声がこだまする。跳ね返ってくる言葉が、いっそう恐怖を掻き立てた。


ジャキンッッッッッ!!!!


驚きのあまり、心臓が張り裂けそうになった。

一瞬、窓の中に白く光る線が見えると共に、重量感のある金属音が響く。

「いつまで、、待たせた......っ、、、の、、、、、」

声の主が、殺された.......!?

窓に赤黒い液体が飛び散っている!!

血だ.....直線状に散っている。刃物を使ったのだろうか。

しかしあんなに重みのある音が出るなんて。

すると、中が全く見えなくなった。

真っ黒なのだ。月が雲に隠れている訳でもないというのに。

しばらく見つめていると、背筋が凍りついた。

黒の中から、にやけた顔の下半分が現れたのだ...!!

「.........................ッッ!!!!」

私は恐怖のあまり、闇の中へ全力疾走しようとした。

しかし、一歩踏み出したところで体が動かなくなった。足が重い...

金縛りにあったように、力が入らない。つまり、逃げられない!


キイィィィ...........


扉が開いた。ザクッ、ザクッという足音が近づいてくる。

私は生まれて初めて、死を覚悟した。

「生者か」

後ろから冷たい声がした。怯えて硬直していて、振り向く事ができない。

「魂が絶たれるのを見たのだな...」

どうやら、完全に気付かれていたようだ。

しかし、彼の言うことが理解できない。生者?魂?

多分、頭の狂った殺人鬼なのだろう。殺されるのも時間の問題だ。

「殺人鬼ではない」

何故考えている事が分かるんだろう!?

「お前の魂の緒を掴んでいるからだ」

すると突然、フッと体が軽くなった。ちゃんと動ける。

まだ怖くて震えていたものの、何とか足を出した。逃げないと...!!


ジャキンッ!!


「ッッ!?」

「逃げるのはまだ早い」

さっきと同じ、重い音。いきなりだったので、臓器が飛び跳ねるかと思った。

まだ早い?逃げたいけれど、このまま走り出せば、確実に殺られる!

「殺したりはしない」

少しは安心したものの、相手は何か凶器を持っているからやはり怖い。

「これが何か、と」

白い光が窓に反射して、後ろが確認できた。

「鎌...............?」

そして私は、恐る恐る後ろを振り返った。


「我は死神」




「ん...................」

明るい...。朝になっていた。

何故私は、こんな所で寝ているのだろうか。


『我は死神』


あれは夢だったのだろうか?

しかしあまりにも鮮明で、自分の感覚があった。

ただの明晰夢だといいけれど......。



「ユリ、分かる?私だよ」

見覚えのある顔が見える。聞き覚えのある声が、私の名前を呼ぶ...。

「ミカ.......?」

「うん」

ああ、私はミカとキャンプに来ていたんだ。

「大丈夫?立てる?」

「ふんっ、、あれ、力が入らない」

上体を支えてもらい、やっと起き上がる事ができた。

「ありがとう」

頭がクラクラしてだるい。足が筋肉痛になっていた。

私は、本当に走ったという事?

「良かった、怪我は無いみたいだね」

「ミカ、何で私、ここにいるんだろ」

ミカは少し考えると、首を傾げた。

「分からないなぁ......」

「夜、変わった事は無かった?」

私がキャンプ地点から出ている理由を知る手掛かりはないものか。

「そう言えば、真夜中にほんの僅かに聞こえたんだけど」

まさか...!

「叫び声と」

私は左腕でミカを制止した。

聞きたくない!あの金縛りのような感覚が思い出される!

「ユリ?」

「ごめん......。テントに戻りたい。ここは危ない気がする」

ミカは少し戸惑いの表情を見せる。

「そうだね、ここに居ても何もできないし...」


どうやら私は、物凄く離れた所にいたようだ。

夢遊病?睡眠障害?ああもう、何なんだ!

私がこんな遠い所まで、しかもミカに無断で出歩くなんて!

「本当にごめんね、ミカ...何がどうなってるか分からないんだ」

「別に構わないよ、ユリが無事ならいいから謝らないで」

小さい頃から、ミカは優しかったなぁ。私達は、一度も喧嘩した事がない。

それに、毎年運良く同じクラスになっている!


「..................あ、あれ!?」

「ミカ、どうかした?」

しばらく歩いていると、ミカが突然キョロキョロしだした。

「ここの筈なんだけど、テントが無い...」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ