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駅のホームに座って、宿の冷蔵庫から回収したおにぎりを食べた時だった。
「あ……、おにぎりが……」
「冷蔵庫にずっと入れてたからな……」
コンビニと同じパックをされたおにぎりは、水分が飛んで変に弾力を無くしていた。
美味しくない。
「不味い」
「……うん」
「コンビニあったらいいけどな」
次行く先にである。
ただ、行きしな見ていた限りではその駅も無人で、周りにはここの駅同様、何もなかった気がするのだ。
──そして電車に乗って着いてみれば、やはりコンビニは愚か民家がポツポツと建っているような、そんな村であった。
「お前の母さん、こんなところに住んでたのか」
「らしいね。親戚とは余り顔合わせたことないから、どうだろう。この辺に実家あるのかな?」
賢翁について、墓地へ向かった。
というか、小さいながら案内看板があちこちに建っていた。
「親切だな……」
「前はこんなの建ってなかったよ」
その途中、運良く売店を見つけた。
いわゆる何でも屋さん的なもので、食品に日用品から鍋やら箒まで売っていた。
手作りのかやくおにぎりも売っている。
しかし賢翁はそこで墓参りに必要な物だけ──雑巾1枚とペットボトルのお茶、供花用の花も1本買った。
そこで、いつまで開店してるか光が聞いたら、午後の4時ごろまで開いてるとのことだったので、後で昼御飯や夕飯もここで買うことにする。
売店を出てまた歩いていく間、賢翁は道端に咲いた花も摘み取った。
やがて、2人はそれらしき墓地に辿り着いた。
日当たりのいい所で、墓石が幾つも建っている。
今が丁度お盆の時期だから、1、2組の家族が墓参りをしていた。
光を連れて、賢翁は母が眠る墓石まで行った。
似たような墓石ばかり立つ中で紛れそうだが、賢翁は迷うことなく母を見つけた。
墓石の周りには小さい小枝や枯れ葉のくずが散乱していて、墓面自体には少し苔が蒸していた。
正直もっと荒れてるかと思っていたが、そこまで汚くなってはいなかった。
良かった。
ここへ来たのは、もう4年前のこと。
賢翁の中で言いようの無い悲しみが込み上げてきたが、「懐かしいなぁ」の一言で胸の内に留めた。
「掃除しなきゃね」
まずは墓石を清めてあげないと。
ここには他にも誰かお参りに来てくれているだろうか。
それとも、もう自分だけ──?
「えーと……水?水何処だろ……」
辺りを見回して水道を探していると、光が入り口近くを指差した。
「入り口近くにあったろ。お地蔵様のトコ」
「そうだったっけ?」
そこまで戻ると水道の脇に水色のバケツと柄杓が置いてあった。
さらに箒も立て掛けてある。
「すげー親切。綺麗に使ってるし……」
バケツは所々黒ずんで年季が入っていたが、汚れている訳ではなかった。
賢翁がバケツに水を入れている間に、光が先に掃きに行ってくれた。
ミンミンゼミだかアブラゼミだかが、けたたましく鳴いている。
「水は掛けないのか」
「それをするとご先祖様に冷水を浴びせるってことになるから、駄目なんだって」
「へぇ」
それは知らなかった、と光。
賢翁が丁寧に雑巾で墓石を拭うのを眺めつつ、掃き掃除を続けた。
それから、花瓶やそれに代わるような容器は持参しなかったので、花は横向けて置いた。
シロツメクサの茎を使って器用に束ねたそれは、野に自生する花ばかりなので淡い色の花や小ぶりな花が多い。
他の墓の供花に比べれば貧相かもしれないが、それでも賢翁の想いが詰まった花束だ。
仕上げにペットボトルの蓋を開けてお茶をお供えして、賢翁が持参した線香も火をつけて3本立てた。
そうして漸く、2人で手を合わせた。
ただいま、母さん──




