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2

駅のホームに座って、宿の冷蔵庫から回収したおにぎりを食べた時だった。


「あ……、おにぎりが……」

「冷蔵庫にずっと入れてたからな……」


コンビニと同じパックをされたおにぎりは、水分が飛んで変に弾力を無くしていた。

美味しくない。


「不味い」

「……うん」

「コンビニあったらいいけどな」


次行く先にである。

ただ、行きしな見ていた限りではその駅も無人で、周りにはここの駅同様、何もなかった気がするのだ。

──そして電車に乗って着いてみれば、やはりコンビニは愚か民家がポツポツと建っているような、そんな村であった。


「お前の母さん、こんなところに住んでたのか」

「らしいね。親戚とは余り顔合わせたことないから、どうだろう。この辺に実家あるのかな?」


賢翁について、墓地へ向かった。

というか、小さいながら案内看板があちこちに建っていた。


「親切だな……」

「前はこんなの建ってなかったよ」


その途中、運良く売店を見つけた。

いわゆる何でも屋さん的なもので、食品に日用品から鍋やら箒まで売っていた。

手作りのかやくおにぎりも売っている。

しかし賢翁はそこで墓参りに必要な物だけ──雑巾1枚とペットボトルのお茶、供花用の花も1本買った。

そこで、いつまで開店してるか光が聞いたら、午後の4時ごろまで開いてるとのことだったので、後で昼御飯や夕飯もここで買うことにする。


売店を出てまた歩いていく間、賢翁は道端に咲いた花も摘み取った。

やがて、2人はそれらしき墓地に辿り着いた。

日当たりのいい所で、墓石が幾つも建っている。

今が丁度お盆の時期だから、1、2組の家族が墓参りをしていた。


光を連れて、賢翁は母が眠る墓石まで行った。

似たような墓石ばかり立つ中で紛れそうだが、賢翁は迷うことなく母を見つけた。

墓石の周りには小さい小枝や枯れ葉のくずが散乱していて、墓面自体には少し苔が蒸していた。

正直もっと荒れてるかと思っていたが、そこまで汚くなってはいなかった。

良かった。


ここへ来たのは、もう4年前のこと。

賢翁の中で言いようの無い悲しみが込み上げてきたが、「懐かしいなぁ」の一言で胸の内に留めた。


「掃除しなきゃね」


まずは墓石を清めてあげないと。

ここには他にも誰かお参りに来てくれているだろうか。


それとも、もう自分だけ──?


「えーと……水?水何処だろ……」


辺りを見回して水道を探していると、光が入り口近くを指差した。


「入り口近くにあったろ。お地蔵様のトコ」

「そうだったっけ?」


そこまで戻ると水道の脇に水色のバケツと柄杓が置いてあった。

さらに箒も立て掛けてある。


「すげー親切。綺麗に使ってるし……」


バケツは所々黒ずんで年季が入っていたが、汚れている訳ではなかった。

賢翁がバケツに水を入れている間に、光が先に掃きに行ってくれた。


ミンミンゼミだかアブラゼミだかが、けたたましく鳴いている。


「水は掛けないのか」

「それをするとご先祖様に冷水を浴びせるってことになるから、駄目なんだって」

「へぇ」


それは知らなかった、と光。

賢翁が丁寧に雑巾で墓石を拭うのを眺めつつ、掃き掃除を続けた。

それから、花瓶やそれに代わるような容器は持参しなかったので、花は横向けて置いた。

シロツメクサの茎を使って器用に束ねたそれは、野に自生する花ばかりなので淡い色の花や小ぶりな花が多い。

他の墓の供花に比べれば貧相かもしれないが、それでも賢翁の想いが詰まった花束だ。

仕上げにペットボトルの蓋を開けてお茶をお供えして、賢翁が持参した線香も火をつけて3本立てた。

そうして漸く、2人で手を合わせた。



ただいま、母さん──




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