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2

「おかしいですねぇ」


言いながらハートのクィーンを持ち上げた光。

やがてニコリと笑った。


「恥ずかしがって隠れたみたいです」


束を置いて空いた手が、トランプの絵柄の表面を覆うように撫でた。

拭うようにして手が離れて行くと……絵柄はスペードの7に変わっていた。

おばちゃんが仰天した様子で声を上げる。


「えーっ!?何でぇ!?」

「中々の恥ずかしがり屋さんですね」


もう一度、カードの表面を大きく撫でる。

今度は……スペードのエース。


「でね、良子さん。こうしてる間にも」


光はカードの束を一文字に拡げて、端から華麗に全て表返す。

良子さんとおばちゃんは、あっと息を飲んだ。

先程数字も柄もバラバラだったはずのカードは、エースからキングまで綺麗に順を揃えて整列していた。

しかも、赤から始まって黒の列で終わっている。


「捜索に協力してくれるみたいです。……良子さんのカードもここには入ってないみたいですし」


そうなのである。

よくよく見るとクラブの列の2が飛んでいる。

スペードのエースは光の手にあるのだが……。


「丁度色も分かれてるので、半分にしますね」


光は赤と黒でそれぞれカードをまとめて2つの束を作ると、黒の方を裏返した。

赤のハートのエースを一番上にした束と、渋い赤裏地の束。

光は2つを突き合わせると、表も裏も無くリフルシャッフルしてしまった。

捜索どころか更に紛れ込んでしまうような暴挙に、良子さんとおばちゃんは展開に追いつくので一杯一杯な様子。


「あら……あらあらあら……」

「これだけごちゃ混ぜにしてしまえば、油断して出てくるかもしれませんよ。何処に居るんでしょうね」


光の手は適当にカードを6つの山に分けた。

それらはやはり表裏バラバラになっていて、やはりクラブの2は見当たらない。

光はそれらをまた回収して1つの束に戻して行き──


テーブルに置くと、パチンと指を鳴らした。

また滑らかにカードが扇状に広げられる。


「あ!」


おばちゃんが声を上げた。

光はそれにただ笑みを返すばかりである。

テーブルの上に広がったカードは、今度は全て赤色に裏返されていたのだ。


……いや、真ん中に白が一筋。


おばちゃんも良子さんも、まさかという顔で光を見つめる。

光は「取ってみて下さい」と良子さんを促した。

良子さんがそろりとたった1枚だけ表に返されていたカードを引き抜く。


やはりそれは「隈元 良子」と書かれたクラブの2であった。


「やーっ、凄い!これどうやってやるのー!?」


感極まって興奮を抑えきれない様子のおばちゃんと、言葉も無く感嘆の吐息を吐く良子さん。

喜んで貰えたみたいだ。


光はそれを見て、どっと緊張から解放されて脱力していくのを感じた。


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