【IF】クーニャ、君を全て(そこ)から救い出すから
この作品は、あらすじでも書いた通り同じシリーズの「何も知らない〜見せて差し上げます」(端折りました)のIF、転生者が転生していたのが第二王子ではなく、とある男爵令嬢に転生していたら、という話です。
今作だけでも良いですが、前作を読んでからこちらを読むとより楽しんで(意味深)いただけると思います。
「クヌーニャ!クヌーニャ・フォン・ツァディク!出てこい!」
「クヌーニャ・フォン・ツァディク、第二王子殿下の命により、参りました。」
「今!この場において、貴様との婚約を破棄する!」
はぁ、最近、私を陥れようとする動きがあるのは、報告にあったので知っていましたが、まさか皇后陛下の誕生祭で実行してしまいましたか...
国王陛下の誕生祭や建国祭とは違い、他国の重鎮などは来られませんが、それでもほぼ全ての貴族が来られることは変わりません。
そんな重要な場で婚約破棄を宣言するなど、王家の求心力の低下、私への絶大な瑕疵...など、ほんの少し考えただけでもかなりの影響が出ることが分かりますのに...
「婚約破棄は承りましたが...殿下、その隣におられるご令嬢は誰でございましょうか?」
報告が確かなら、あの令嬢が、
「ぺウラ・シトゥーフ男爵令嬢だ。」
「ああ、殿下御懇意令嬢ですか。」
「愛しと言え!」
急に激情なさるとは...
前はこれほど怒りっぽくはなかったのですけれど...
「はぁ、ではその愛しのぺウラ嬢がなぜ殿下のお隣におられるのでしょう?いくら"愛しの"という枕詞が着くとはいえ、本来なら婚約者...そういえば先ほど婚約破棄とおっしゃいましたか、そうおっしゃられるのでしたら、既に両家立ち合いの元での書類の破棄はなされているのですよね?」
「そんなことをする必要がどこにある!」
...ああ、頭が痛いです...
「...それは王命に逆らったということでは?」
「なぜ伴侶を決めるのに父上に決められねばならんのだ!」
その点は完全に同意ですね。
...殿下、扉を見た?
「改めて、私はクヌーニャ・フォン・ツァディクとの婚約を破棄し、この、ぺウラ・シトゥーフ男爵令嬢と婚約を結ぶ!」
...ああ、やはり、この令嬢は自身より上位の者から何かを奪うことに優越感を感じているのでしょう。
あとは王子妃となることで玉の輿かしら?
「...その言葉、もはや撤回はできんぞ?」
殿下が宣言した直後、
「こ、国王陛下!?」
この国の太陽、賢王とも称される国王陛下が参られました。
「王国の太陽である国王陛下へ...」
即座に跪いて挨拶をしようとしましたが、
「良い良い、そなたには我が息子が迷惑をかけておる。楽にしてくれ。」
「...分かりました。」
そう答えると陛下は顔を綻ばせ、頷いた。
「イディオート、そなたその宣言によって起こることが分かっておらんのか?」
「?」
殿下...
何も分かっていなかったのですか...
「こ...この愚か者がぁ!!」
「ひっ!」
悲鳴を上げたのはぺウラ嬢の方ですね。
殿下は...笑っている?
しかもあの笑みは...
「婚約破棄された令嬢のその後はな、大抵は嫁入りなどできずに厳しい修道院に入ることになる。...お前はよく知っていると思うが、令嬢はプライドが高い。そんな令嬢が修道院でまともに暮らせると思うか?」
「そ、その人は私を階段から突き落とそうとしたり暗殺者を差し向けたりしたんですよ!?」
...国王陛下に許可も得ず会話に割り込むなんて、打ち首にされたいのでしょうか?
「余はそなたに話しかける許可を出していない。衛兵!」
「はっ!」
「ちょっ、話しなさいよ!私はこの世界のヒロインよ!みんなに愛されるの!」
ひ、ひろいん?
何を言っているのでしょう??
「シトゥーフ男爵、そなた、娘にどのような教育を施したのだ?」
「へ、陛下!わたくしめは断じて!断じて王家に取り入ろうなど思い上がったことは考えておりません!あの子も最近までは孤児院へ顔をよく出し、支援も多く行い、孤児たちの母親のように振る舞っていたのです!それが、数日前から急に振る舞いが淑女のしの字もないような振る舞いに変わり、言葉使いも市井の婢女のようになって」
「もうよい。そのような戯言を撒き散らすようなら貴様も貴様の娘と同じ場所へ行くか?」
そう言われると、彼女の父親は黙りました。
「...さて、先ほどの問いの答えを聞かせてもらおうか?」
「思いません。」
「そうか、それを分かっても婚約破棄するか?」
いくらご子息とは言え、逃げ道を用意するとは...
宰相閣下が頭を抱える未来が見えます...
「ええ。」
殿下、せっかくの陛下からの温情を...
「クヌーニャ嬢もそれを望むか?クヌーニャ嬢個人の答えを聞かせてくれ。」
私個人の?
「私は...」
殿下、なぜ悲しそうなお顔を?
殿下の望むことは婚約破棄でしょう?
「殿下、一つお聞きします。正直にお答えください。」
「なんだ?」
これをこんな場所で聞けば、我が家の致命的なことがカンの良い貴族によって露呈するかもしれない。
それでも。
「私の、現在置かれている状況を理解いますか?」
陛下は...知らないようですね。
殿下は...
「!?...あぁ。」
ああ、これは...もう無理ですね。
「待て!クーニャ!」
ああ、懐かしい呼び名。
でも、もう無理。
第二王子が知っているなら、第一王子も知っているでしょう。
だから打ち明けるしかない。
「陛下、申し上げたいことがございます。」
「クーニャ!」
「衛兵、第二王子を別室へ。」
「はっ。」
「クーニャ!思い止まれ!」
「口を塞げ。」
「うむっ!んんん〜!」
そして殿下は別室へ連れられていきました。
「クヌーニャ嬢。」
「はい。」
ふう。覚悟は決めた。
後は告げるだけ。
「ーー私個人の考えを述べる前に、申し上げたいことがございます。現在、ツァディク家は、執務を十分に行えておりません。」
「だが私の元には十全に行えていると報告が来ている。」
「それはそうでしょう。私が全て行っていましたから。」
「なっ!?それは真か!?」
「ええ。おそらく父は我が家にいくらお金が入っているかも知らないでしょう。」
「それが真ならば当主の能力不足で爵位を王家預かりにする必要があるな。では報告も終わったようであ」
国王陛下がパーティを終わらせようとしてしまいましたので、無礼ですが、どうせ貴族としての人生なんて終わるのですし、国王陛下の言を遮ってしまいましょう。
「そして我が家はいくつもの不正を犯しています。」
「ラーツァハ!今すぐあいつの口を塞げぇ!殺してでも!」
父がパーティに来るとは珍しいですね。
ですが人の目がある場所で殺害の指示をするなんて、愚かですね。
「衛兵。」
「はっ。」
「くっ、何をする!私は侯爵だ!貴様らごときが触れて良い訳がないだろう!離せ!」
「続けてくれるか?」
「はい。では、我がツァディク家は、複数件の貴族の嫡子暗殺の指示、禁制品の毒物の密輸、関税の無断で引き上げ、さらには第二王子殿下と、王太子殿下の暗殺計画、国王陛下の玉璽の偽造、奴隷の流通に売買、役人を自身の息のかかった者に入れ替わらせるなど、いくつもの重罪を犯しています。」
「なん、だと?」
「こちら、執務室から持ち出しました証拠です。」
そう言って集めていた証拠を提出する。
「ふん!」
ーーーバキッ!グシャビリッ!
あ、そういえばそこにおられる役人は父が送り込んだ入れ替えた人物でしたね。
「はっはっは。これで証拠はない!残念だったなぁ?お・じょ・う・さ・ま?」
「そしてこちらが先ほど宰相閣下から返却されました国王陛下の玉璽の偽物です。」
「は?」
まあ"証拠"とは言いましたが、"現物"とは言ってないんですよねぇ。
あ、さらに言えば先程破られた物も偽物です。
明日か明後日に、本物が宰相様から国王陛下に手渡される予定です。
「受け取った。...確かに精巧な偽物だな。だがこれ単品では偽物とは認められん。」
「そこは宰相閣下が保証してくださるでしょう。他の罪の証拠は、父が裏切れないように私に預けてくださった証拠の書類が何枚もございますので、先ほど紙を破かれた程度では証拠は尽きませんよ?そもそも偽物ですが。」
「そうか。では今渡してはくれぬか?」
「先ほどのようなことがあっては困りますので宰相閣下を通じて後日お渡しするということで宜しいでしょうか?」
「...分かった。」
ふう。これで私の貴族人生は終わり。
家を取り潰されて私は...北の修道院送りかしら?
それでもいいわ。
やりがいがありそうですし。
ああ、早く沙汰を下してくらさらないかしら?
「そなたには追って沙汰を下す。まずはツァディク当主夫妻からだ。待っていてくれ。」
「かしこまりました。」
ー◆ー◆ー◆ー
翌日
「よく来たなクヌーニャ嬢。」
「ええ。ご無沙汰しております、国王陛下。」
私は王宮へ呼び出された。
おそらく今から沙汰を下されるのでしょう。
「さて、早速だがそなたに沙汰を下そう。」
「クヌーニャ!可愛い娘よ、我らを助けてくれぇ!」
「...無粋な邪魔が入ったな。衛兵!」
疲れた顔の衛兵の皆様が入室し、口を塞ぎました。
国王陛下の呼びかけにも答えないとは、それほどまでに疲れているのでしょう。
私の前を横切った衛兵に、
「お疲れ様です、家族が迷惑をおかけします。」
そう囁いた。
衛兵は驚いた顔をして、少し頭を下げた。
「さて、続けよう。そなたに下す沙汰は、そなたに選んでもらう。」
「え、選ぶ、ですか?」
選ぶ権利など...
南の修道院か北の修道院か選ばせていただけるのでしょうか?
「そうだ。一つはツァディク家を準男爵家まで降爵の上、2年間、王家への税を1.5倍された領地を成人したそなたが継ぐ。これなら平民に落ちずに済む。」
いくら税が増え、爵位が三つも下がるとはいえ、破格すぎる...
何か裏が...
「何も裏などないぞ?大貴族の不正を、関係者とはいえ、証拠付きで暴いてくれたことを考慮したまでだ。そしてもう一つは...丁度よく本人が来たようだ。入れ。」
「はい、父上。」
「この余の愚息であるイディオートと結婚し、市井で暮らすことだ。」
...この2択ならば、確実に最初を選ぶ方がいいだろう。
おそらく陛下もそう考えている。
しかし...
「殿下、最近の振る舞いは、全て私を貴族の、特に実家から切り離そうとしてのことですね?」
そう確信を持って問う。
「...どうして分かったんだ?」
やはり。
「殿下、婚約破棄の宣言の際、陛下が入場する際にお使いになる扉を気にされていました。あれは確実に問いたださせるためだったのでしょう?さらにお叱りを受けている際も口角が上がっておられましたよ?」
「...君には全て筒抜けだったか...」
筒抜け?
私でもあのパーティが終わった後に整理してやっと気づいたのですが?
「いいえ?昨夜気づきましたよ?」
「そうか...あの女は騎士団長の子息や宰相の子息まで毒牙にかけようとしてたからあの女を道連れに破滅しようと思ってたんだけどね...」
「殿下がそこまでする必要が?」
「君が私のせいで暗殺者を差し向けられたり冤罪で陥れられかけたりしてるだけなら心配なかったんだけど、家での扱いを知ったら、解放しなくてはと思うだろう?」
「...はぁ、お前は正直になれんのか?」
「ちょ、ちょっ父上!?な、何を」
「こいつはそなたと顔合わせをした時からずっと惚れておったぞ?」
「父上ぇ!?」
「え?」
殿下が、私のことが好き?顔合わせの時から?
「え、えぇ!?」
改めて認識すると、ものすごく意識してしまう。
今まで当たり前のように見ていた顔が恥ずかしくて見れない。
ああ、照れている顔がかわ...わ、私は何を考えて!?
「あ、あわわわわ」
「ほれ、自分で告らんか!せっかくここまでお膳立てしたのだぞ?」
「ええ。」
そして殿下が近づいて来て、
「ほらクーニャ。顔上げて?」
「うう、無理です...」
今の私の顔は真っ赤になっているでしょう。
あと口角が上がりきってだらしない顔になっていそうです。
そんな顔を見せるなんて...
そうして粘っていると、
「ひ、ひゃぁっ!」
「君が顔を上げてくれないからだよ?」
こ、声が甘い!顔が良いし近い!
私今お姫様だっこされてる?
「ああぁぁぁぁ...」
羞恥心でどうにかなってしまいそう...
「こら、顔、隠さないで?」
そう言って降ろされました。
うぅ、恥ずかしい。
「ふふ、やっと昔みたいな顔を見せてくれるようになったね?」
「え、?あっ!」
そう言うだけ言って、私に手を差し出した。
「王子としての身分も権力も、何もかも無くなってしまう僕だけど、絶対に幸せにする。」
この、セリフは...
「私に生涯着いてきてくれるかい?」
ああ、これはこう答えるべきでしょう。
「いいえ、殿下。」
殿下の顔がものすごく暗くなった気がしますが、無視します。
そこで溜めて、
「私もあなたを幸せにしましょう。私はあなたの後ろを着いていくだけの女にはなりません。あなたの、隣を歩かせてください。」
そう言って、久々に心の底から出た笑みで、笑いかけました。
ー◆ー◆ー◆ー
断片
「これは、本当か?」
「...」
「そうか...気づいてやれなくてごめん。クーニャ。僕が、いや、
"私"が、君を全てから救い出すからーー」
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できるだけ毎日投稿をしていくのでこれからもお願いします。
[その他]
えー、キャラ崩壊は自分の中ではしてないです。
主人公は元々は恋愛に憧れる普通の少女だったけれど、王子の婚約者になってから完璧な令嬢として振る舞わないといけなくなったって設定だったので、そのしがらみが解けた今、元の性格が出てきたって感じです。
というか男も女も行ける転生者って一体何者...
そしてこの世界線ではイーシュ君、そして前作の世界線ではイディオート殿下(本人の方)を失恋させる転生者はある意味本当に乙女ゲーを忠実に再現してますね...




