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本当にあった(かもしれない、ある意味)怖い話 その9 幻視  作者: こますけ


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2/2

「ある意味怖い話」部分

 はい、間違いありません。

 それがあの日、僕と彼女の間に起こったことです。

 「不幸な事故だった」とか「思い込みの生んだ悲劇だ」なんて言うつもりは、一切ありません。

 僕は、間違いなく自分の意志で彼女の首を絞め、殺しました。

 彼女のご家族には、本当に申し訳ないことをしました。

 どうか僕を、凶悪な殺人犯として裁いてください。


 ただ……もし、もしも耳を貸してもらえるのなら、これだけは分かってほしい。

 僕にとって、彼女のお母さん……サクラさんとの思い出は、つらく苦しいことばかりだった僕の20代の思い出の中で、本当に得がたく尊いものだった。

 暗く冷たい、牢獄にとらわれていた僕の気持ちを唯一慰め、暖めてくれる、ろうそくのともしびのような記憶だったんです。

 彼女は、その思い出の中から抜け出してきたとしか思えなかった。

 20年経っても変わらぬ若さを保ったその姿を見て、お母さんそっくりに育った娘さんだったとは、全く思い至らなかったんです。

 もし、病気を経験していなければ……妄想と格闘した、つらい記憶がなければ、きっと、自然に「娘さんだ」と思ったんでしょうね。

 あるいは、娘さんがお母さん譲りのいたずら好きでなく、最初に「サクラの娘です」と言ってくださっていたら。

 いや、やめましょう。

 いくらこんなことを言ったところで、彼女の命が戻りはしません。

 本当に、本当に申し訳ないことをしました。


 後からお聞きしましたが……彼女は、「お母さんが昔好きだった人に、こっそり会いに行く」とお友達に話していたんだとか。

 それを聞いて……僕はどれほど後悔したか。

 あの部室に差し向かいで座って過ごしたかけがえのない時間は、妄想でもなんでもない、正真正銘の「幸福な時間」だった。

 僕は……僕は、自分の不安と弱さに負けて、その大切な思い出までも、穢してしまった。

 本当に、どうしようもない人間です、僕は。

 しでかした罪の大きさを思えば、僕には生きる権利など、もはやひとかけらもあるとは思えません。

 そして、最後の希望の灯火さえ自分の手でもみ消してしまった今、生きていたいとも思えません。

 どうか、僕を死刑にしてください。

 裁判長。どうか、お願いします。



「ある意味怖い話」部分投稿。以上で完結。


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― 新着の感想 ―
そうか…。最後の女性は、本人ではなく娘さんでしたか…。 …。 それはそれとして、この話を読んで私が怖くなったのは。 統合失調症、端から見れば多重人格の様な振る舞いをしていただろう主人公と、「普…
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