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9話 西野かな?

「他にもコーラやら色々あるから好きなの選んでくれ」

「あ、はい・・・」


そう言うとパンパンに詰まったコンビニ袋を後部座席に放り投げた。


「悪いけどこの車禁煙だから」


と、胸ポケットからタバコを取り出した。


「はい」


駐車場の端に設置されている灰皿に向かい。別に吸いたかった訳でも無いが何となくでタバコを咥えた。


「あれ?」

「ん?」

「先輩って電子に移行したんじゃなかったでしたっけ?」

「あー、久々に紙吸いたくなってな」

「へー」

「あー、すまん。火ぃ貸してくれ」

「あ、はい。どうぞ」


ポケットから100円ライターを取り出して先輩に手渡した。


シュボッ───。


「ふぅ~~~~~」

「どうですか?」

「あー・・・やっぱ味は紙のが美味いな」

「へー、そうなんですね」

「でも、臭い」

「えー?電子のが臭くないですか?」

「慣れだなぁ。最初は臭かったけど慣れたら紙のが臭く感じるようになったなぁ」

「へー」

「お前はずっと紙だよな」

「そうですね」

「あー、そうか」

「??」

「前の家がボロかったからヤニとか気にしなくて良かったのか」

「あー、そうですね」

「新居はどうなんだよ?出てく時に壁紙の張替えやら色々取られんぞ?」

「換気扇の下で吸ったりベランダで吸ったりしてるんですけど。それでもですかね?」

「徹底してりゃあマシかもだけどメンドい時も換気扇の下まで行くのか?風邪ひいてる時とか」

「まぁ・・・寝起きとかベッドの上で吸ったりしてますね・・・」

「全然ダメじゃねーか」

「いや、でも・・・もういっそ諦めた方が良いですかね?敷金とか」

「それこそ、これから何年住むか次第だろ」

「何年・・・」

「死ぬまで独り身ってんならあそこでも問題無いだろうし」

「いやいや、それは流石に・・・」

「って、このやり取りやったな」

「ですね・・・」


彼女は欲しい。結婚も相手が居ればいずれしたいとは思う。

でも、なぜか焦っては居ない。年齢的にはそろそろ焦るべきなんだろうから、そう考えると結婚願望が薄いのかもしれない。


「先輩って」

「ん?」

「なんで結婚したんですか?」

「・・・・・・」

「あー、なんか端折り過ぎました。彼女は欲しいと思うんですけど、その先の結婚とかまでは考えられないというか考えた事が無くて」

「おう」

「先輩はどういう経緯で結婚まで至ったのかなー?と」

「カナタ」

「はい」

「ライター」

「え、あ、はい、どうぞ」


久々だと言う2本目の紙タバコに火を付け。ゆっくりと煙を吐き出し「臭ぇな」と呟き。そこからゆっくりと奥さんとの馴れ初めを語り出した。



話は先輩の大学時代まで遡った。出会い方や付き合うまでの経緯ははぐらかされたので不明だが重要なポイントはそこでは無く・・・。


先輩の奥さんはメンヘラというか、かなりのヤンデレだった。

束縛が強く一緒に居る時ですら不安に駆られブチギレて暴れ出す時限爆弾の様なヤンデレ。


「そんなんで・・・いや、良く耐えれてますね・・・」

「まぁ・・・最初っからそうだった訳じゃないっつーか。徐々に悪化してったっつーか・・・」

「なるほど・・・」

「なんつったら良いか」

「はい」

「何かしたり、何か与えると落ち着くんだよ。しばらくは」

「はい」

「最初に気付いたのは。思い付きでピアスをプレゼントしたらさ」

「はい」

「そっからしばらくは束縛が緩くなってな」

「あー、はいはい」

「なるほどと思って束縛が強くなってきたタイミングでネックレスをプレゼントしたら」

「はいはい」

「今度は効かなかった訳だ・・・」

「え?」

「抗体っつーか・・・耐性が付いたのか同じ手口では効かなくなる厄介なヤツでな・・・」

「は、はい・・・」

「そこでよ」

「はい」

「さっきの話に戻るけど」

「はい」

「結婚でもすれば治まるかと思った訳よ」

「あー、そこまで戻るんですね」

「結果、それでもダメで。子供でも出来りゃーとも思ったけどそれでもダメで」

「はい・・・」

「もう次が浮かばねーんだよなぁ」


確か子供も2人居たはずだから、2人目の時には一縷の望みに賭けたって感じなんだろうか。

そんな事を考えていた所為か・・・。


「あー、愚痴聞いて貰いたいだけで。お前に解決して貰おうなんて思ってないから安心しろ」

「いや、まぁ、はい・・・」


そんな気を使わせてしまうくらい苦々しい顔をしていたのか。

相変わらず顔に出過ぎだ・・・。


「さてと・・・そろそろ帰るか」

「だ、大丈夫ですか?」

「んー?」


何が大丈夫なのか。そして、無理って言われても俺には何も出来無いし困るだけではある・・・。


「いや・・・」

「車に置きっぱのスマホも震えまくってそうだしな」

「あー、奥さんからの連絡ですか・・・」

「会いたくて会いたくて震えてる訳じゃねーぞ」

「なんでしたっけそれ」

「おい、タダが知らないっつーのは分かるけど、お前は知ってんだろ。若ぶんなよ」

「いや、知ってますよ。思い出せないだけですっ」

「逆に年寄りぶってたのか」

「最近、物忘れが・・って違いますよっ」



そこからは奥さんの話は一切無く。「要らんからやる」と、吸い切れずに残ったニコチンのキツいタバコを押し付けられたりしながら楽しく送り届けて貰えた。

その盛り上がり方が余計に奥さんの事がガチなんだろうと思わせた。


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