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5話 再チャレンジ

昼頃に作られたグループラインでは「どこに食べに行くか」いっその事「飲みはナシで肉の質を高めるべき」等の意見もあり白熱しまくった。

そして、結果から言うと俺の負担は3万円。3万を4人に奢り、足が出た分は4人で割り勘にするそうだ。

俺は金欠なので安いコースにする予定だ。


「うし・・・そろそろ上がるわ」

「お疲れさまー」

「お疲れっしたー」

「あー、俺もそろそろ上がります」

「お疲れ様ー」

「お疲れっしたー」


普段ならもう少し残業をしているし、引っ越し費用・・・焼き肉代も掛かるから少しでも稼いでおきたい所だけど今日は先輩に倣って早めに帰宅する事にした。


「どした?今日は早いな」

「先輩こそ」

「昨日1日お前の引っ越しに付き合って、来週もだろ?」

「来週もって、それは先輩がっ」

「まぁ、良いから聞けって」

「はい・・・」

「ウチの嫁さんは嫉妬深い」

「ん?はい。ノロケですか?」

「いや、まぁ、普通に考えたらそうなんだろうけど・・・ちょっと度を超えてるくらいに嫉妬深い」

「えっと・・・言葉を選ばずに言うと・・・メンヘラって感じですか?」

「いや、ヤンデレまでいくかな・・・」

「そんなにですか?」

「まぁ・・・結婚すりゃー治まるかとも思ったけどダメで。子供出来りゃー治まるかと思ったけどダメで。って、感じだな」

「だったら焼き肉はもうちょい先でも」

「んー・・・経験則的にさっさと済ました方が良い気がすんだよなー」

「そう言うなら任せますけど」

「で?よ」

「はい?」

「今日は珍しく早いよな」

「あー、最初に戻りましたね」

「おう。ついに彼女でも出来たか?」

「そんなんじゃないですよ」

「ほーん」

「引っ越したばっかで色々あるんですよ」

「隣が可愛い娘だったとか?」

「あっ・・・」

「ん?」

「ご近所さんに挨拶してない・・・」

「何やってんだよ」

「こういうのって何が良いんでしたっけ?」

「昔はタオルとか定番だったけど今はゴミ袋とか?」

「あー、はいはい」

「まぁ、でも」

「はい」

「1番良いっつーか、喜ばれるのは金券だな」

「風情が無い・・・」

「でも、金が1番じゃね?」

「確かに・・・」

「無難なのは地域指定のゴミ袋とかじゃね?」

「なるほど」


今思えば、実家からボロアパートに越して来た時はその辺りの事は全部母親がやってくれてたんだろう。

キッチリした人だから引っ越しの挨拶をしてないとも思えないし、俺自身にやった記憶が無い以上は母親がやってくれたんだろうと思う。


どうせだったらそういうのも教えてくれれば良かったのに。と、思ったが・・・思春期特有のアレ。親と一緒に人前に出たくない感じ。

引っ越しの挨拶しといたと言われても「余計な事すんなよー」とか言ってそう・・・。

そう考えたら何も言わずに済ませてくれてたんだろう。


親元を離れて気付くありがたみ。それがこの年になっても時間差で来るから本当に親には年々頭が上がらなくなっていく。


「それじゃあ、俺はこっちなんで」

「ん?どっか寄るのか?」

「ちょっと買い物しようかと」

「ふーん、そんじゃまた明日な。お疲れさん」

「お疲れ様でした」



先輩と別れ向かった先は・・・。


今日1日ずっと考えていた事がある。クローゼットの中の扉。扉をくぐり抜けた先の石畳の部屋。更に、その先にある通路。

あれらの正体はいくら考えた所で答えを導き出すのは難しいと思う。


詰まる所・・・進んでみない事には何も分からないという事。いくら考えても結局はその答えに辿り着いてしまった。


そこで、俺が考えたのは・・・。



ホームセンターでいくつか目当ての物を買い、足早に新居へと帰宅した。


「意外と安く済んだな・・・」


あの謎の部屋。あれはきっと別の次元だったり異世界に通じてるんだと思う。確証は無いけど、そんな気がする。

いや、それ以外に考えられないし・・・。


昨夜、無性に怖くなったのがその繋がりが何かのキッカケで途切れてしまい。あの謎の空間に取り残されてしまう事。


今でもそうなると想像すると肝が冷えるし、そうならない事を祈るしか出来ないのがまた怖い・・・。


その対策として考えたのが元の世界と異世界。この2つの繋がりが不安定・・・なのかはどうか分からないけど、その繋がりをなるべく維持する為に元の世界(俺の部屋)と扉の向こう(異世界)とを常時繋いでおけば、その繋がりは断たれないのではないかと。


仮定に仮定を重ねて意味の無い理論なのは理解している。

でも、問題無い。

なぜならば、俺が多少でも安心出来れば良い。ただそれだけだから。


会社から帰り、スーツから普段着に着替え、部屋の中なのも新居なのも気にせず部屋の中でスニーカーを履き、ホームセンターで購入したロープの端をテーブルに結び、反対側をベルトに結びつけた。



そして、意を決して再び石畳の通路へと足を踏み出した。


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